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特集ワイド 2号警備の料金2022.08.01

警備業者が適正な警備料金を確保するためには、正しく積算した見積り金額を発注者に提示することが必要だ。全国警備業協会の業務適正化小委員会委員の松尾浩三氏(岡山県警備業協会会長)が6月23日に岡山警協加盟員を対象に行った講演から、2号警備料金の積算方法と公共工事設計労務単価の推移、災害支援協定に基づく有償出動で確保した警備料金の実例をまとめた。

国土交通省は毎年、交通誘導警備員など公共工事に関わる51職種の労働者が受け取る所定労働時間8時間の賃金相当の「公共工事設計労務単価」を都道府県ごとに定めている。労務単価には会社に必要な経費や一般管理費が含まれていないため、警備会社はそれらを正しく積算した料金を発注者である建設会社に請求する必要がある。

公共工事の予定価格の積算は国交省が定めた「積算基準」に基づき行われる。国土交通省が監修し建設物価調査会が発行する「国土交通省土木工事積算基準」「土木工事標準積算基準書」「土木工事積算基準マニュアル」の3冊には発注費用の項目の定義や積算方法が紹介されており、参考になる。積算方法は社会情勢などにより毎年一部が改定されるため注意が必要だ。

公共工事に従事する交通誘導警備員の雇用に必要な費用は、労務単価を100%とすると、これに健康保険料など「法定福利費」15%、制服代など「労務管理費」8%、電話代や事務用品費など「現場作業経費」18%の合計41%を“必要経費”として加算する。さらに会社運営に必要な維持管理費などの「一般管理費」9.74〜23.57%を加えた業務価格を建設会社に請求する必要がある。

国が工事の予定価格を積算する際、交通誘導警備員の計上方法は改定されることがある。警備員の賃金(労務単価)は2015年度までは間接工事費内の共通仮設費に含まれる安全費として計上していたが、16年度から直接工事費に計上することになった。「仮設工」内の「交通管理工」に計上する。

また警備計画における交通誘導警備員の計上方法については18年度に改定された。交通を規制する工事で休憩時も交通誘導が必要な場合、発注側の官積算の計上額と現場での実際の配置に要した費用では差があることが問題視されたのだ。

例えば、警備員4人で交通誘導業務を行う現場は官積算では4人×1.2=4.8人で計上されていたが、実際は4人+交替要員1人=5.0人が必要になる。現場の実態に即した積算とするため交替要員が必要な場合は割増係数による積み上げを廃止し、交替要員を含めた必要な配置人数を必要日数分計上することとした。

勤務時間は午前8時〜午後5時が基本料金の対象となる。所定労働時間外の労働の場合、基本料金の0.25倍を加算した割増料金を計上する。午後5時〜午後10時と午前5時〜午前8時は時間外労働になる。午後10時〜翌日午前5時は深夜残業として別請求することが必要だ。

災害時の有償出動 適正料金確保の実例

災害時の警備業出動においても平時と同様、適正料金を確保することが大切だ。

2018年7月の西日本豪雨で岡山県倉敷市、総社市、高梁市などで未曾有の被害がでた。倉敷市の要請を受け、市内の警備業者を中心に出動した。岡山警協は県警本部から「警備員が不足している」と相談を受け、1997年に県と締結した災害支援協定に基づく警備員の出動を提案した。

全国初の有償出動で前例がないことから警協は県、県警と協議を繰り返した。そして県から県警を通じて警協に文書による協力要請があり、警備料金は県から警備業者への直接支払いと決めた。単価は18年度の労務単価、積算基準に基づき次のように設定した。

平日は1日9時間以内(休憩1時間含む)2万円(税別=以下同)、超過勤務は1時間3125円(1日を8時間で割り1.25を積算)。日祝祭日は同2万7000円、超過勤務は同4218円、夜間(午後10時〜午前5時)は同3万円、超過勤務は同4687円。警備員出動は7月21日〜8月31日の42日間、延べ739人で警備料金3000万4555円(時間単価は約3061円)を確保した。

その後、約2年半にわたり、倉敷市真備町内の警備業者を中心に災害仮設住宅と各小中学校間の通学バス全26ルートに警備員を1日延べ46人配置した。業務は各ルートの巡回警備と登下校児童の安全確保だ。単価は前述と同額で計上し、次年度は平常時1000円減で設定した。