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クローズUP

安全・安心まちづくり2018.8.21

熊本警協が県警と協定

熊本県警備業協会(西恭介会長)は8月9日、県警(小山巌本部長)と「安全・安心まちづくりの推進に関する協定」を締結した。

協定の目的は、相互の連携を強化し、事件や事故などを認知した際の迅速な通報やドライブレコーダー(ドラレコ)の記録データ提供などを通じた県民の安全・安心への寄与。同協定に基づき熊本警協は▽事件や事故、人心の安全を確保する必要がある事案を知った場合、速やかな警察への通報▽高齢者がATM付近で携帯電話で通話しているなど、振り込め詐欺被害に遭うおそれがある人を発見した場合、積極的な声掛けと警察への通報――などを行う。一方、県警は熊本警協に対して必要な情報の提供や講師派遣や資料提供など熊本警協の活動を支援する。

9日に県警本部内で行われた協定締結式には、熊本警協の西会長と林修一生活安全部長が出席、署名した協定書を取り交わした。

西会長の話  加盟68社・約4000人の警備員全員が協定の重要性を認識し、県民が安全・安心して暮らせる社会実現に寄与していきたい。

林生活安全部長の話  協定は、県警が重点課題として取り組んでいる「子供・女性・高齢者の安全と安心の確保」に直結する。“犯罪のない社会づくり”に大きな効果が期待できると確信している。

木村昌平氏が死去2018.8.21

セコム、全警協会長を歴任

セコムの社長、会長、全国警備業協会の会長を歴任した木村昌平(きむら・しょうへい)さんが7月21日、死去した。75歳だった。葬儀は故人の遺志により近親者で営んだ。

木村さんは1967年、同志社大を卒業して日本警備保障(現・セコム)に入社。40歳代の初め、常務取締役に昇進した。創業者の飯田亮氏から「俺が興味があるのは、お前がどこまで成長するかだ」と言われたのは、知る人ぞ知るエピソードだ。

2002年に代表取締役社長に就任。社員には、“飯田イズム”を継承して、目標を定め、志を立て、先見の明を持たなければならないと説いた。「経営の心は魂に汗をかくこと」という言葉を好んだ。

会長を経て相談役に就いた。10年には全警協の4代目会長に就任。懸案だった協会の一般社団法人への移行を手がけた。セコムの相談役、全警協の顧問となったのを機に、知己の陶芸家の誘いもあって栃木県益子町に移り住んだ。

当人は「終の棲家。いわば、隠遁生活者だよ」と笑っていた。中国、日本の古典に造詣が深く、益子町では地元の人たちの要望を受け、〈益子昌平塾〉とネーミングした“講話会”を開催して交流を深めた。近年は〈益子町観光大使〉も引き受けていた。

木村昌平さんを偲んで2018.8.21

元富士ゼロックス社長 有馬利男氏

思い返せば、すでに30年が経過した1987年のことでした。飯田亮氏(セコム取締役最高顧問)、小林陽太郎氏(故・富士ゼロックス社長)、真藤恒氏(故・NTT初代社長)、梅津昇一氏(ユーエスコーポレーション会長)ほかのビジネスリーダー諸氏が「21世紀を担う指導者を育成しよう」と«フォーラム21»を結成しました。

木村昌平さんと私は、その第1期生として初めてお会いしたのです。既にセコムの役員であった彼の発言は、私にはとても眩しく感じられたものでした。それ以来、濃密なお付き合いをさせていただきました。

«フォーラム21»の数々の集まり、伊豆合宿での障害者体験学習、経済紙の社長対談、双方の社員への講演など様々のことが思い出されます。ベルリンのサッカーW杯決勝戦もご一緒させていただきました。カラオケもお上手でした。

2007年からは、仲間で中国古典の勉強会「尚論会」を立ち上げ、東洋思想研究家、田口佳史師のご指導を仰ぎながら「書経」から「貞観政要」、そして「孟子」へと読み続け、議論を続けてきました。寡黙な木村さんが発言する時はズバッと核心と本質を突き、いつも方向性を示してくれました。

とりわけ「老子」を深く読み込んでいて、我々の勉強会のレベルを遥かに超えたものでした。

人生の最終節では益子町で「昌平塾」を主催し「老子」を中心に約60名の塾生を育てました。例年、益子の「濱田庄司記念参考館」をお借りして「昌平塾」と「尚論会」のコラボを開催しましたが、木村さんが熱く語る「老子」は、全人格を注ぎこんだ迫力のあるものでした。

木村さんは速足で去ってゆかれました。人の数倍の濃度で人生を見つめ、味わい、足跡を残されました。今、木村さんの逝去に接し、自分を支える背骨を失ったような感覚です。

30年余、長く濃いお付き合いを頂いたことに心より感謝申し上げ、お別れの言葉と致します。有難うございました。

特集ワイド 「教育」は成長の礎2018.8.21

寄稿 元神奈川警協専務理事・早川正行氏

警備業の教育制度が変わろうとしている。警察庁が4月に発表した有識者検討会報告書では、生産性向上を理由に警備員教育の合理化が示された。このような動きがある一方、元神奈川県警備業協会専務理事で本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏は本紙に寄稿、教育の充実が職場の魅力を高め、人材確保につながると指摘している。

警備会社に対する、教育懈怠による行政処分が収まらない。都道府県公安委員会が公表する行政処分を見ても、教育懈怠が圧倒的に多い。最低限の法定教育をも実施できない警備会社があまりにも多い現実は、何を意味するのか。教育懈怠のこうした背景を探っていくと、「教育はカネを生まない」という愚かな悪習に突き当たる。

このような根性が経営者に染み付き、経営者の経営感覚をむしばんできた。目先の利益を上げるために「教育懈怠」が蔓延しているのである。教育コストを削減し、会社の存在を守るために教育懈怠が会社の方針として実行されているのだ。

このような確信犯が業界の健全化を阻害している。

■人材確保に通じる

現在、警備員不足が業界の最大の課題として挙げられているが、警備員不足の大きな要因に警備業の魅力の欠如がある。まともな教育を受けていないと思われる警備員が働く職場は、とても魅力のある職場とは思われない。

警備業務を魅力あるものとするためには、警備員の賃金アップなど処遇の改善に加え、教育により、警備員の質の向上に取り組むべきである。業界には、上場企業を筆頭とする経済界をリードする警備会社が存在する半面、法定教育さえも、まともに行うことができない警備会社が存在するなどあまりにも落差が大きい。

その落差の原因は社内の教育体制にあるといっても過言ではない。警備員教育こそが、優秀な警備員を養成し、魅力ある職場を築くための基盤といえる。人材を確保するためには、「教育はカネを生まない」という悪習と決別し、警備員教育に重きを置くべきであろう。そうして、警備業務の商品価値を高めるのである。

商品価値の向上は自ずと警備料金の向上に反映され、今、業界を挙げて取り組んでいる人材確保にも通じる。教育こそが会社の魅力を高め、会社の成長に資するのである。

■ダンピングの弊害

私の記憶する2008年前後、ダンピング競争が苛烈を極めたころ、いわゆるダンピング会社といわれる警備会社は教育懈怠により経費を削減した。経営者にとって最も重要な警備員教育の義務を放棄し、経費を抑えた上で、仕事を取るためにダンピング競争が横行したのだ。

ダンピング競争は必然的に警備員の賃金を低く抑えることの常態化につながった。同時に、教育懈怠により警備員の質の低下も招いた。

現在、警備料金アップの交渉をしようにも、「この程度の警備員を配置して警備料金を上げるのですか」というユーザー側の反論がある。明らかに教育を受けていない警備員にヨレヨレの制服を着せて、現場に配置し、警備料金を上げて下さいはないだろう、というユーザー側の不信感である。

私が神奈川県警備業協会の専務理事の頃、ある市の入札担当者から電話があった。

入札により、警備業務を落札した会社の警備員は、姿勢・態度に加え服装も乱れているため、とても警備員とは思われないというもので、部内で入札の責任を問われていることがうかがわれた。

公安委員会の「認定証」を持っていれば、どの警備会社も基本的には同じと考えているユーザーが多いことの一例である。だからこそ、市の入札担当者は、規則どおりに警備料金の安い「札」を入れた警備会社を指名したのである。

「安かろう」の陰にある「悪かろう」を見抜くことができなかった入札担当者は気の毒ではある。しかし、業界の体質を調査の上、入札業務を行うべきであった。

公安委員会の認定証には、警備業法を守るという最低限のモラルを包含していると考えるのは当然であり、業界の信用を失墜させたダンピング会社の責任は重大である。

深刻な人手不足に直面している現状を考える上で、警備員の賃金を無視したダンピング競争により、警備員の賃金の低下を招き、教育懈怠により警備員の質の低下を招いたことに対し業界を挙げた反省が必要である。

■「安心・安全」が商品

警備業はサービス業に分類される。「安全・安心」というサービスの提供を業としているものである。そして、商品となる「安全・安心」を提供しているのは現場の警備員である。現場における警備員の姿勢、態度、言葉遣いなどの安心感そのものが商品となる。

ここで大切なことは、警備業が業として担う「安全・安心」は、警察法第2条に定める警察の責務に通じているということである。

警備業法制定の機運が高まり、警備業法を所管する官庁を検討した際、警備業務は商行為とはいえ、個人の生命、身体、財産の保護を業務としており、警察の責務に通じていることから、警察庁が警備業法を策定することとなった。したがって、「安全・安心」というサービスは警察の責務を源とする。

それ故に、警備業法は、「安全・安心」を担う警備員教育を厳しく規定している。

警察官も警察の責務を担うために、警察学校において、高校卒業者で1年間、大学卒業者で6か月間の初任教育を設けている。

警備員の場合は、新任教育30時間以上、現任教育8時間以上が法定教育となっているが、「安全・安心」を担う警備員としては最低限の規定といえるだろう。

■付加価値を追求

現在の警備員教育の問題点は、規制法たる警備業法の性格によるものと思われるが、サービス業の視点に欠けることである。

規制法であるが故に、良識ある会社を除き、多くの経営者はサービス業の精神を育むことができなかった。規制の枠の中で、違法スレスレの業務を行う習慣が身に付き、規制を超えたサービス業という気概を持つ経営者は極めて限られていった。

警備業法は、警備員教育の責任者として警備員指導教育責任者を置き、制度化しているが、これはあくまでも法定教育に限定されており、サービス業としての教育は想定されていない。そのため、警備員指導教育責任者の役割は限定的である。

サービスの質を高め、商品に付加価値を加えるためには、独自のカリュキュラムを研究し、法定教育にプラスした形で実施することが求められる。

それぞれの会社が独自の指導者を育成し、サービスの付加価値の競争により、業界の活性化を促していきたいものである。