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クローズUP

「パートナーシップ構築」「宣言」推奨を明記2022.10.11

改訂「自主行動計画」

「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」の改訂は、全警協が今年6月から7月に実施した加盟社への「フォローアップ調査」の結果と、政府の適正取引へ向けた新たな取り組みなどを受けた。

具体的には、昨年12月に政府が開催、出席した全警協・中山泰男会長など27の業界団体に示された「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」や、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」(下請中小企業の取引環境整備などが内容)が、今年7月に改正されたことなどを反映させた。特に振興基準の改正で「客観的な経済合理性または十分な協議手続きを欠く協議の禁止」「年1回以上の価格交渉」「一般的な賃金引上げ水準を考慮した下請事業者との取引価格の決定」「威圧的交渉の禁止」――などが追加されたことから、これらを警備業の親事業者(発注者)や警備会社間での契約交渉や協議に反映させることを、「自主行動計画」にも明記した。

また、政府が企業間の“パートナーシップ”の構築を強く推奨していることから、新たな自主行動計画にも「警備業界もパートナーシップ構築宣言を行うことを強く推奨する」を明記。加盟社に同構築宣言を推奨する要請文を出すとともに、全警協ホームページに同構築宣言のポータルサイトへのリンクを開設するなど宣言促進に取り組む。

さらに、警備会社における取引条件などの改善につながった“好事例”を全警協ホームページで公開し、現在公開中の事例についても引き続き公開していく。

適正取引推進のための「自主行動計画」は、各業界を所管している関係省庁が主導して各業界団体に策定を要請。警備業は、全警協が2018年3月に「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」として初めて策定した。以降、全警協は毎年「フォローアップ調査」を実施、一層の活用のため改訂を重ねてきた。

横断歩道では停止!2022.10.11

ALSOK警送埼玉、県警「KEEP38」運動に参加

信号機のない横断歩道でも停止します――。ALSOK警送埼玉支社(さいたま市見沼区、菅原英希支社長)は、埼玉県警察本部交通部が展開する交通安全運動「KEEP38(キープ・サンハチ)プロジェクト」に参画、交通事故防止に取り組んでいる。

同プロジェクトは、横断歩道での歩行者優先義務が規定されている「道路交通法38条」の正しい理解と順守のための運動。県警作成のシンボルマークをあしらったステッカーを車両に貼り、運転者の意識啓発はもちろんのこと、歩行者に優しい模範運転を実践する取り組みだ。2020年にスタートし、現在は県内700事業者が参画している。

車両に貼るステッカーは、県警が考案した「KEEP38」のロゴ以外は、配色や大きさを変更することが可能だ。

ALSOK警送埼玉支社も同プロジェクトに賛同、6月に県警本部から同運動の「モデル事業所」の指定を受けた。出発前点呼や研修、朝礼などで横断歩道での歩行者優先を改めて周知、事故防止と安全運転意識の向上に取り組んでいる。

特集ワイド 急ごう「DX」対応2022.10.11

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義は、経済産業省によると「企業がビジネス環境の変化に対応し、デジタル技術を活用して競争上の優位性を確保すること」。DX対応が警備各社の課題となる中、警備報告書の電子化サービスの現状、警備業協会や企業のDX研修について取材した。

国は行政手続きのデジタル化を急速に推進している。政府のデジタル臨時行政調査会(岸田文雄会長=首相)は、これまでの対面や書面掲示が必要となるような規制の見直しに入った。例えば警備業の認定証は、事業所に掲示が義務付けられているが、今後はホームページなどインターネットでの掲示も必要になるとみられる(9月21日号既報)。

警備業界は中小企業が大多数を占める。社会の変化に取り残されないため、経営者は対応を急がねばならない。日進月歩のDXについて情報を収集し関心をより高め“自社が導入すべきシステムは何か”などについて社内の意見を聞いてスピーディーに取り組むことが求められている。

警備業のDXは、AIカメラなど先端技術の活用、警備員教育のeラーニング活用にとどまらない。社内のインターネット環境・リモート会議環境を拡充することは、顧客のニーズに応えてビジネスチャンス拡大に結び付くことが期待される。

労務管理、事務処理に新システムを導入することは、社員の負担を減らし職場環境の改善、生産性向上につながるものだ。ホームページ・SNSの充実は、顧客層や求職者に対する企業PR効果が見込まれる。

今やデジタル社会に対応するための投資や研修は、企業が長期的な発展を目指すうえで欠かせないものとなった。

福岡警協が研修会 青年女性特別委

いち早くDXをテーマとする研修会を開いたのは、福岡県警備業協会の青年女性特別委員会(森田沙耶委員長=三協警備保障)だ。7月12日、全国警備業協会基本問題諮問委員会・ICT作業部会の豊島貴子部会長(山口警協会長)を招いて「経営基盤強化に資するICTテクノロジー活用」について講演を行い、青年・女性部会員など関係者47人が出席した。

研修会では、同作業部会ワーキングチームのメンバーを務める森田委員長も講演した。DXが進まないと2025年以降は年間で最大12兆円もの経済損失が発生する可能性があると経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題や、情報通信技術の急速な進歩によって“今後1年の変化は過去10年の変化に匹敵する”という「収穫加速の法則」などを説明。そのうえで、老朽化した社内システムの刷新やITに強い人材育成への投資を呼び掛けた。

森田委員長は「参加者からは『企業がDXに対応すべき理由が理解できた』、『社内で取り組む際のアドバイスがほしい』などの意見がありました。“デジタル化は避けて通ることのできない課題”という現状は伝わったと思います。協会活動を通じて、より多くの会員がDXに対する関心を今まで以上に高めて、情報共有を図る必要性を改めて感じます」と話している。

「警備報告書の電子化」ジャガーノート2022.10.11

京都警協青年部会がアイデア提供

手書きの「警備報告書」を電子化し、警備員と会社の負担軽減を図る――。IT企業・ジャガーノート(東京都渋谷区、平井智仁代表取締役社長CEO)は、スマートフォンのアプリで警備報告書を作成しクラウド上に保管するシステム「KOMA(コマ)サイン」を開発し、10月3日からサービスを開始した。開発にあたり京都府警備業協会青年部会(水上太一部会長=コトナ)が協力し、アイデアを提供した。

警備報告書は、業務完了の証となり警備員への給与支払いや契約先への請求書作成に必要な書類だ。警備員は、現場監督などに報告書を手渡し確認のサインをもらった上で自社へ提出する必要があり、FAXや郵送の通信費、交通費などが発生していた。

内勤者は、手書きの警備報告書をデータ入力する作業に追われ、破損や紛失の場合は再度作成しなければならない。その後も警備報告書を長期間保存するため保管場所も悩みの種となっていた。

コマサインは、スマホで警備報告が完結し、クラウド上に報告書を保管、ペーパーレスを実践する。

警備員は顧客などの項目を事前に入力しておくことで簡単に報告書を作成できる。

現場でのユーザーによる確認の検印は、スマホ画面に指やタッチペンでサインしてもらう。位置情報、作成日時も記録され紙の報告書よりも信憑性が高い。検索機能を使えば過去の報告書データを即座に呼び出すことができる。

部会員が意見出し検証

京都警協青年部会はこれまで「警備業の契約書の電子化」「社内ペーパーレス化」について勉強会を開くなどしてきた。警備報告書をめぐる労力やコストを解消し“警備現場のDX”につなげようと部会員は意見を出し、サービス内容の検証に携わった。

部会員の永岩創氏(エムアイディ専務取締役)は、開発のきっかけを次のように述べた。「宅配業者から荷物を受け取る時、従来の“紙にサイン”でなく指で電子サインを行うようになりました。これと同様に、警備報告書に記入する情報を警備現場から本社に送信する仕組みはできないかと考えたのです」。

永岩氏は、警備会社に向けたクラウド型の管制システム「KOMAINU(コマイヌ)」を開発した実績がある平井社長に相談した。警備業に特化したITサービスの提供に取り組む平井社長は「警備報告書の負担が減れば警備員も内勤者も助かる」という部会員の思いに共感して開発に着手した。

顧客に提出する警備報告書の控えについては「毎日の提出でなく週ごとにまとめて提出して問題ない」との声が多く、警備会社と顧客の間で取り決めを行って運用ができるシステムを構築した。

部会員の企業の警備員がスマホを使ってテストに参加。「高齢の警備員も使いこなせるよう操作しやすいデザインに」、「自社で使用中の報告書と同じ形の報告書をスマホで使えるようにできないか」などの要望を実現した。

平井社長は「警備報告書を一律に電子化するのではなく、紙の報告書と電子報告書を共存させて、3年から5年かけてデジタルに移行するための第一歩としてコマサインを導入してもらえればと考えています」と話している。