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クローズUP

世界の市場規模は24兆円2021.10.11

遠藤保雄の米国便り③

手元に世界の警備市場の規模を調査分析したレポートがある。作成したのは米国クリーブランド市に本社を置く「フリードニア・グループ社」だ。「2013年版」と「2020年版」の数字を見比べると、市場拡大の推移が興味深い。7年間で売上高は、ざっと3兆3000億円の増加となった。さまざまな数値を交えながら「今後の予想」も付記してお届けしたい。

【2013年】グローバルベースでの警備企業の売上高は1907億ドル(18兆8125億円、当時の為替レート1ドル=98.65円)。警備員数は2170万人とある。

警備業務の内容は次のようなものだ。(1)施設の常駐・巡回警備55.0%(2)機械警備22.7%(3)武装警備員による輸送警備8.5%(4)刑務所の管理運営2.2%(5)その他11.6%――。

地域の分布をみると、北米と西欧で約5割を占め、アジア太平洋、中南米、東欧、アフリカ、中東の順になっている。具体的なエリアの比率は次のとおりだ。(1)北米31.0%(うち米国27.2%)(2)西欧21.2%(3)アジア太平洋19.8%(うち日本4.8%、中国3.5%)(4)中南米14.2%(5)アフリカ・中東9.0%(6)東欧4.7%――。

この市場規模の地域分布から見える特徴は、北米、西欧、日本といった先進国の警備業務の割合が、人口の割合では14.2%にもかかわらず、世界の警備業務の6割近く(57.1%)を占めていることである。

警備業の世界的展開が進んでいる中、6社が世界的規模の「多国籍警備企業」としてリストアップされている(国名は本社の所在地)。ジーフォーエス(G4S=英国)、セキュリタスAB(スウェーデン)、タイコ・インターナショナル(スイス)、プロセガー(スペイン)、ブリンクス(米国)、エーディーティ(ADT=米国)である。この6社で世界市場の2割を占める。

日本の市場規模分が7年間で丸ごと増加

【2020年】世界の警備市場の規模は2200億ドル(24兆2000億円=為替レート110円)と算定した。13年と比べて約300億ドル(3兆3000億円)の増加である。7年間で世界市場は、日本市場の全体が丸ごと新たに増えた計算となる。

警備業務の構成内容は(1)施設の常駐、巡回警備53%(2)機械警備における警備のモニター監視(Alarmmonitoring)24%(3)現金輸送(Cash―in―transitandrelatedservices)9%(4)警備に必要な各種システムを統合した警備(SystemIntegration)4%(5)その他10%である。

14年から19年にかけての世界の地域別の警備市場の増減を見てみると、注目はアジア太平洋が9%と大幅に増加したことである。北米地域も4%増を記録した。その一方で、中南米地域は7.5%減、西欧も1.5%減、東欧2%減、アフリカ・中東0.5%減となった。

【今後の予想】前出の「フリードニア・グループ社」は、19年から24年にかけてはグローバルベースでの警備市場は年率3.6%の増加と推計、警備業務の根強い拡大が続くと見込んでいる。

地域別に見ると、北米3%増、中南米3.5%増、西欧2%増、東欧3.5%増、アジア太平洋6%増、アフリカ・中東3.5%増と全ての地域でプラスの増加を見込んだ。中でもアジア太平洋地域での大幅な増加を予測した。

近年、世界の警備市場の規模について、各種の民間調査会社による見通しが相次いで報告されている。調査会社が報告書の販売宣伝のために出す短いサマリー(要約)によると、今後の数年間は、概ね年率3%から4%に近い数値で市場の増加傾向が続くことで一致している。

調査会社の中には、売上高の推計を表記しているものもある。それによると、今年からの4年間、日本円で実に4兆円の市場拡大を見込んでいる。世界市場の拡大傾向から目が離せない。

パパのおしごとは?2021.10.11

警備業PR放映 熊本警協

警備業のPR映像「パパのおしごと」が9月29日、熊本県内のケーブルテレビ局「ジェイコム」のニュース番組で放映された。

同映像は、「就職奨励金」の交付など人手不足が深刻な特定の業種を支援している熊本市(大西一史市長)と、熊本県警備業協会(西利英会長)が協力して制作。警備業の内容や魅力を広く紹介し、深刻な警備員不足を解消するのが目的だ。

内容は、交通誘導警備員の父親の仕事を見学に来た娘に、父親が仕事内容を教えながら娘の質問に答え、警備業の魅力を伝えるというもの。同協会青年部会長の松本智行氏(トラスト熊本)と同氏の小6の長女・陽菜多さんが出演した。

同映像は市と熊本警協のホームページに掲載するとともに、両者の各種イベントでも放映する。

219社・団体が出展2021.10.11

危機管理産業展 20日から東京ビッグサイト

国内最大級の「危機管理」をテーマにした総合トレードショー「危機管理産業展2021」(RISCON TOKYO、主催=東京ビッグサイト)が10月20日(水)〜22日(金)の3日間、東京ビッグサイト青海展示棟(東京都江東区)で開かれる。

危機管理産業展は、社会を取り巻くさまざまなリスクに対処するための製品やサービスの展示会。今年で17回目の開催となり、219社・団体が出展する。

展示内容は、「セキュリティー」「防災・減災」「事業リスク対策」の3分野に加えて、新たに「感染症対策」「危機管理におけるデジタル化・DX推進」が緊急企画として設定された。今年も全国警備業協会(中山泰男会長)が出展し、警備業のアピールと協会活動の紹介を行う。

国内唯一のテロ対策展「テロ対策特殊装備展'21」(SEECAT)も併催、48社・団体が出展する。4年後の「2025大阪・関西万博」を見据えた治安維持のための多種多様な製品・システムが出展される。警備業からはセキュリティー(岐阜市、幾田弘文代表取締役)が、テロ対策に向けた資機材などの展示を行う。

両展示会とも事務局は徹底したコロナ感染対策を講じて、安全な会場作りを目指す。

特集ワイド 最賃UP 助成金活用2021.10.11

今年の最低賃金引き上げの結果、全国平均は対前年比28円増の930円となった。800円未満の最賃が初めて姿を消すこととなったが、政府が掲げる目標は「1000円」である。できるだけ早期の到達が目指されているため、来年も引き上げは続きそうだ。

10月1日から新しい最賃の適用が都道府県ごとに始まっており、大半の経営者が引き上げられた金額に準じた賃金規定を整えたはずだ。中には業績が振るわないことを理由に二の足を踏んでいる経営者もいるかもしれないが、世の風潮は「コンプライアンス重視」である。法で定められた最賃を無視することは許されず、仮にそうした行為に及んだとすれば、商売相手の「取引先名簿」から外されてしまうことを覚悟しなければならない。

最賃の引き上げは、短期的・経理的な観点で見るとコスト増となる。特に警備員を複数雇い、多くの現場に配置している経営者は負担が大きいと感じるかもしれない。しかし、これまで見過ごしがちだった社内のコストや生産性を見直すきっかけになる。

業務改善進める

まず取り上げるのは、事業場規模100人以下で、かつ事業場内で最も低い時給(事業場内最低賃金)とその地域の最賃額との開きが30円以内であることが受給条件の「業務改善助成金」だ。生産性を向上するための設備投資を行い、事業場内最賃を一定額以上引き上げると、20万円〜450万円の範囲で助成金が受けられる。今年8月からは引き上げ額に「45円コース」が加わっており、選択肢が増えた分、従来よりも使いやすくなっている。

生産物のない「労働集約型産業」の警備業が生産性を上げるには難しい面もあるが、例えば会議のリモート化による交通費の削減や、非接触型自動検温器の導入による検温時間の削減でも生産性は上げられる。

直近3か月間の売上高や生産量などの経営指標が前年同期比「30%以上」減少した中小事業者向けの特例も新設された。会社の業況が厳しいにもかかわらず「10人以上」に対して賃上げを行うと、最大600万円受給できる。事業場内最賃が900円未満の事業場も対象だ。

助成の対象には「人材育成・教育訓練費用」もあり、その受給要件も10月1日から緩和されている。弁護士や社会保険労務士など労務の問題に通じた専門家を講師に招いて研修などを行うケースも対象で、「やや使いにくい」との声があった従来の要件と費用が見直されている。

さらに、賃上げ6か月後に提出が必要な賃金台帳も、これまでの全労働者分から「賃上げ対象者分」に簡略化され、コロナ禍でニーズの多い自動検温器やウェブ会議システムも助成の対象になった。

人材確保に向け

「人材確保等支援助成金」のメニューの一つ「人事評価改善等助成コース」は、人事評価制度と賃金制度を整え、賃上げや離職防止に取り組むと助成される制度だ。

生産性向上に向けた人事評価制度を作って都道府県労働局長の認定を受け、実際に2%以上の賃上げを行うと50万円の助成がまず受けられる。その後3年間、生産性向上の取り組みと引き上げた賃金の支払いを続け、離職率の低下を労働局長に認められると、最初の50万円に80万円が上乗せで支払われる。

キャリアアップに

パートやアルバイト、派遣労働者などの賃上げを補助する「キャリアアップ助成金」もある。「正社員化」「障害者正社員化」「諸手当制度等共通化」「短時間労働者労働時間延長」の4コースあり、例えば「正社員化コース」は(1)期間を定めて働く有期雇用労働者を正社員にすると57万円(2)有期雇用労働者を契約期間に定めのない働き方に変えるか(3)同様の無期雇用労働者を正社員にすると28万5000円の助成が受けられる。いずれも1年度当たり20人が上限で、雇用形態の転換前後6か月を比較し、1か月当たり3%以上賃金が上がっていることが必要だ。

「諸手当制度等共通化コース」は非正規にも正社員と同様の手当を適用する事業者が対象で、1事業所当たり1回に限り38万円受給。2人目以降は一人当たり1万5000円、共通化する手当を1つ増やすごと、10手当を上限に16万円加算される。

一足飛びに正社員化できなくても、「手当」を正社員に合わせて非正規の処遇を上げるのはそれほど難しくない。人手不足の中、人材の引き止めにも効果が期待できる。