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警備員教育 大幅見直し 2019.6.21

新任20時間、現任年1回10時間に

警察庁は年内にも警備業法施行規則と警備員検定規則を改正する。新任、現任の両警備員教育の時間数や頻度を減らすとともに、eラーニングなどによる教育も認める。また、雑踏警備と空港保安警備の配置基準、登録講習機関が行う講習会の実施基準も見直す。五輪や人手不足などを背景に警備ニーズは高く、警備員の早期養成を可能とする教育見直しは歓迎される。一方で、警備の質を維持・向上できるかが今後の課題だ。

警備員教育の見直しでは、検定合格者などを除く人に対する「新任教育」を、現行の「基本教育15時間以上・業務別教育15時間以上の年間計30時間以上」を「基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上」に教育時間数を削減する。

「現任教育」は、これまで半期(年2回)ごとに実施が義務付けられていた「基本教育3時間以上・業務別教育5時間以上の計8時間以上(年間16時間以上)」を「基本教育と業務別教育を合わせて年1回・10時間以上」と実施回数・時間数ともに削減。教育内容(事項)は、新任、現任ともに、基本・業務別教育いずれも従来と同じだ。

教育方法は現行の教本や視聴覚教材などを用いた教育に加え、新たに「eラーニング」など電気通信回線を使用して行う教育も認める。同教育を行う場合には(1)受講者が本人であるか確認できる(2)受講者の受講状況を確認できる(3)受講者の警備業務に関する知識の習得状況を確認できる(4)質疑応答の機会が確保されている――ことが必要だ。

検定合格者などを除く未経験者に対する新任教育で、業務別教育として教育時間に算入できる一定の要件を満たした人が講師として実際の現場で行う「実地教育」の時間数は、現行では8時間。今後は業務別教育の時間数の半分または5時間のいずれか少ない時間数を超えない時間数となる。

配置基準はICT勘案

空港保安、雑踏の両警備業務の配置基準については、現行では一定の場所や区域ごとに1級検定合格警備員や2級検定合格警備員を1人または1人以上配置することが義務付けられている。今後は警備する場所のICT(情報通信技術)などの利用状況を勘案して検定合格警備員を配置する場所の範囲を特定する。

登録講習機関が行う講習会については、現行では講師1人当たりの受講者数が学科40人以下・実技10人以下と制限が設けられている。今後は同制限を撤廃し、効率的な講習会の実施で受講者数の増加に対応する。

これら両規則の改正に当たり警察庁は、6月10日から約1か月間、同庁ホームページの「パブリックコメント」コーナーで広く国民の意見を募集する。寄せられた意見などを検討し、年内にも公布、施行する見込みだ。

警備業との適正取引 建設業団体に要請2019.6.21

警察庁と公取委、国交省

行政が警備業を応援――。警察庁生活安全局長と公正取引委員会経済取引局取引部長、国土交通省土地・建設産業局長は連名で5月27日、全国の建設業団体109のトップに警備会社との取引に当たり適正取引を要請する文書を発送した。契約内容の明確化や、実質的な値引きにつながる不当な要求をしないように求めている。

同日、これとは別に警察庁生活安全局生活安全企画課長と国交省土地・建設産業局建設業課長の連名で同じく建設109団体に、警備業との公正取引を求める文書も送付した。文書には全国警備業協会が作成した見積関係書類記載例を添付し、適正取引の参考にするように求めた。

これらの要請は今年2月に全警協が行った全国の警備業者500社を対象にした「自主行動計画」の進捗調査と、公正取引委員会が警察庁と国交省との合同で行った警備業の取引実態調査の結果で不当な取引が多く見られたことを踏まえて行った。

全国警備業連盟 設立記念パーティー開く2019.6.21

正・賛助会員など200人参加

政治団体「全国警備業連盟」(青山幸恭理事長)は6月5日、都内のホテルで「設立記念パーティー」を開いた。同日までに設立した全国15道府県の警備業連盟の理事長や、連盟未発足地域の「賛助会員」など約200人が参集した。

来賓として自民党の林幹雄幹事長代理、加藤勝信総務会長、森山裕国会対策委員長、「警備業の更なる発展を応援する議員連盟」の竹本直一会長、公明党の太田昭宏議長など衆参両院の与党議員12人が出席。安倍晋三首相、菅義偉内閣官房長官、二階俊博自民党幹事長が祝電・祝辞を寄せた。

青山理事長は「警備業界は人手不足、働き方改革と課題山積だ。国権の最高機関である国会議員の指導を仰ぎながら課題解決、業界の発展を目指したい」と連盟設立の目的を述べ、今後の協力とさらなる加入を求めた。

パーティーに先立ち全国警備業連盟の設立総会と初の理事会が開催された。事業計画と収支予算が示され、いずれも承認された。また、出席した道府県連盟の理事長が各連盟の加入社(者)数など現状を報告した。

特集ワイド 「労災ゼロ」の警備業へ2019.6.21

7月1日から全国安全週間。今年のスローガンは「新たな時代に PDCA みんなで築こう ゼロ災職場」。増加傾向にある警備業の労働災害を撲滅するための取り組みについて、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の奥村伸人課長に寄稿してもらった。

増える死傷者

労働災害による休業4日以上の死傷者数は、全産業では長期的に減少傾向にあるのに対し、警備業の死傷者数は近年増加傾向にあります。2018年の警備業の死傷者数は1760人で、対前年比9.8パーセント増加しています。全産業では5.7パーセントの増加であった中で残念な結果です。

死傷災害を事故の型別に分析すると、最も多いのが「転倒」で約38パーセント、次いで「交通事故(道路)」約14パーセント、「動作の反動・無理な動作」約12パーセント、「墜落・転落」約11パーセントとなっています。「転倒」と「交通事故(道路)」で警備業の労働災害の過半数を占めていることから、重点的な対策を講じることが必要と言えます。

18年の死亡者数は31人で、対前年比2人(6.1パーセント)の減少です。この31人の事故の型別の内訳は、「交通事故(道路)」が12人、「おぼれ」4人、「高温・低温物との接触」4人(うち熱中症3人)などです。

今年の労働災害の発生状況は、5月末現在の速報値では5人(交通事故3人、おぼれ2人)が亡くなっており、対前年同期で3人減少しています。休業4日以上の死傷者数は519人で、前年同期よりも51人(8.9パーセント)の減少です。

年齢別の被災状況は、全体の7割近くを50歳以上の労働者が占め、その人数・割合ともに年々増加しています。こうした状況を踏まえ、特に次の事項を重点とした労働災害防止対策の強化が必要です。

合図は確実に

交通誘導警備と輸送警備における交通事故の対策が重要です。

道路工事などでの交通誘導警備では、不特定の第三者が運転する車両を対象とするため、警備員の意思が運転者に伝わりにくいなどの問題点があります。分かりやすく確実に合図を伝える、安全に配慮した適切な誘導位置の確保、適切な装備品・保安用資機材の装着・使用など、基本的な安全確保策を徹底してください。

現金輸送車などの輸送警備においては、「交通労働災害防止のためのガイドライン」などに沿い、適正な走行計画の作成、乗務開始前の点呼等による運転者の状況の確認、運転者に対する教育の実施、交通ヒヤリマップの作成や交通KYT(危険予知訓練)による危険感受性の向上、雪や大雨などにおける安全の確保などの取り組みをお願いします。

大切な危険予知訓練

警備業では、暗い夜間での警備や緊急時の駆け付け、降雨・積雪のある屋外での警備など他業種にはない課題もあります。また、警備場所の管理権限が及びにくいこともあると思われますが、警備場所のオーナーの理解・協力を得ながら転倒の原因の除去・改善を図るとともに、警備員への危険予知訓練などを通じた注意力の向上など、転倒災害防止対策に一層の取り組みをお願いします。

厚生労働省では、2015年より「STOP!転倒災害プロジェクト」を実施し、事業場での転倒災害防止の取り組みを促進しています。各社の皆様におかれても、引き続きご協力ください。

7月は熱中症に重点

昨年、警備業での熱中症での死傷者数は前年の3倍にもなり、うち死亡3人は、道路上、鉄道線路上、橋梁建設などいずれも屋外警備作業でした。

厚労省が実施中の「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」では、7月は重点取り組み期間です。警備業等の作業現場では(1)黒球付測定器によるWBGT値(暑さ指数)の測定と適切な作業計画(2)屋外での作業の場合に冷房や屋根などの休憩を取るための設備の整備(3)健康診断結果や点呼時を活用した当日の健康状態の把握(4)熱中症の早期発見と緊急時の対応についてあらかじめ確認し、救急車の要請等の適切な対応――等を呼び掛けています。

気温が急に上昇したとき、雇入れ時や休暇明けで身体が暑さに慣れていないときに、熱中症は特に発生しやすくなります。暑さが本格化する7・8月に向けて、今一度、熱中症対策を重点的に実施してください。

熱中症の要因となる脱水症状(体の中の水分が不足している状態)になると、体がだるい/やたら眠い/お腹を下す/気持ち悪い症状を起こします。こうなった時は、ただちに水分(冷水)と塩分をとらせ、休憩させて下さい(緑茶、コーヒーはNG)。

高齢者に配慮した職場に

人は一般に加齢とともに、身体能力・感覚機能が変化してきます。特に、足の筋力、視力・聴力、バランス感覚、記憶力・判断力などが低下し、若年の頃と比べ、転倒や墜落・転落などの労働災害に遭いやすくなります。

警備業では高年齢労働者の割合が高いことから、高年齢労働者でも安全で快適に働ける職場づくりに努めていくことが重要です。例えば、(1)床面の段差や凸凹を視認しやすいようにする(2)表示の字を見やすい大きさ・色にする(3)適切な照度を確保する(4)取り扱う重量物の重さを制限する(5)作業時間を見直す――などがあります。加えて、注意喚起だけで終わることなく、高年齢労働者の心身機能の変化を踏まえた職場環境の改善を図っていくことが必要です。

中央労働災害防止協会より、高年齢労働者の安全と健康確保のための取り組みはもとより、高齢期に健康で安全に働くことができるようにするための若年時からの準備としての取り組みを盛り込んだチェックリスト「エイジアクション100」が公表されていますので、参考にしてください。

リスクを除去・低減

作業現場にある危険有害性を特定し、それらによる労働災害の重篤度(けがなどの程度)とその災害が発生する可能性を組み合わせてリスクを見積もる。そのリスクの程度に基づいて対策の優先度を決めた上で、リスクの除去・低減措置を検討し、その結果を記録する一連の安全管理手法として「リスクアセスメント」があります。

厚労省では同手法に基づいた潜在的な危険有害性を未然に除去・低減させる先取り型の安全管理の導入の促進を図っています。警備業の各事業場でも、これを取り入れることで、警備業務の中に潜む災害リスクの除去・低減を図ってください。

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労働災害の撲滅は一朝一夕には成しえない課題です。前述したような対策をコツコツと着実に実践していくことが重要です。

厚労省では、労働災害を防止するために国や事業者、労働者等の関係者が重点的に取り組む事項を定めた中期計画「第13次労働災害防止計画」において、それぞれの業種の特性や労働災害の状況に応じた対策を講じることとしています。

今年度は、全国警備業協会にご協力いただきながら、警備業向けに雇入れ時教育に活用できる安全衛生教育マニュアルを作成しているところです。マニュアルが完成した際には、厚労省ホームページから入手いただけるようになりますので、社内の安全衛生教育にご活用ください。

令和初の全国安全週間を契機に、今一度新たな視点で職場を見つめ直し、労働者の皆様に基本的な安全ルールを守って仕事をしていただき、本社が職場と一体になって全社的な安全管理を進めていくことで、警備の現場が、より安全に安心して働ける職場となることを心から期待いたします。