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クローズUP

〝その時〟に備える2019.9.11

「防災の日」で警備員

「防災の日」を迎えた関東地方では、首都圏の1都3県5市合同の「九都県市合同防災訓練」が相次いで行われた。各地の警備業協会はこれら訓練に“出動”、緊急車両の交通誘導警備などを行った。宇都宮では警備会社が独自の防災訓練を企画、地域住民と連携した避難誘導などを行った。

千葉警協

緊急車両を支援 道路啓開テキパキと

千葉県警備業協会(横倉健会長)は9月1日、船橋市内で行われた九都県市合同防災訓練に“出動”した。千葉県は今回、九都県市訓練の中央会場。安倍晋三首相をはじめとする関係閣僚も自衛隊ヘリコプターで空路現地入り、訓練の模様を視察した。

訓練は県北西部直下を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生、船橋市内では震度6強の揺れで建物倒壊や液状化による道路損壊などが多数発生したと想定して行われた。訓練参加機関(団体)は約110機関、参加人員は約5000人。

千葉警協は、道路啓開訓練に臨んだ。放置車両のレッカー移動作業や倒壊した信号機の撤去・仮設信号機の設置作業現場での交通誘導警備に当たった。

訓練には今回から同協会青年部会の「社会貢献活動グループ」のメンバー6人が参加。同協会の横倉会長や押井信義専務理事など多くの関係者が見守る中、メンバーはテキパキとした行動で緊急車両の安全な通行と道路啓開作業をサポートした。

東京警協

止血法、AED 負傷者への対応学ぶ

東京都警備業協会(鎌田伸一郎会長)は9月1日、「令和元年度東京都・多摩市合同総合防災訓練」に参加した。訓練は「九都県市合同防災訓練」の東京会場。多摩直下を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生したという想定で、多摩市の多摩中央公園や多摩ニュータウン通りなどを会場に行われた。

東京警協からは警視庁との災害時支援協定に基づき、災害対策委員や警備員など合計130人が参加した。午前中は来場者の誘導案内を行い、午後からは協会独自で災害による負傷者への対応を学んだ。

負傷者対応では協会講師が止血法やAEDの使用方法、窒息時の呼吸確保などを説明した。止血方法について講師は、出血している部分に清潔なガーゼやハンカチをあてて片手で圧迫する直接圧迫法を解説。注意点として、細菌などで負傷者が感染する危険があるため清潔なハンカチなどを使うようにと述べた。

パルテノン大通り会場では警備の仕事を紹介するブースを出展。東日本大震災での災害支援活動のパネル写真の展示や、9月14日に新宿で開催する「警備の日」記念イベントの紹介などを行った。

北関東綜警

携帯型翻訳機で外国人を避難誘導

北関東綜合警備保障(宇都宮市、青木靖典社長)は8月31日、本社屋「あんしんかん」と市内の2公園で「第24回グループ防災訓練」を行った。市中心部で震度6強クラスの直下型地震があり、市内全域で建物崩壊や土砂崩れ、道路の寸断などが発生。本社に青木勲同社会長を本部長とする災害対策本部を設けたという設定で訓練した。同社警備員459人と住民ら401人が参加した。

「あんしんかん」では同社バイク隊やドローンによる被災地の情報収集や、レスキュー隊による消火用タンク車を使用した消火などを行った。近年は外国人旅行者が増えていることから、外国語による外国人の誘導も訓練した。同社女子警備隊が携帯型翻訳機を用い避難誘導した。

住民一人ひとりの防災力を高めるという目的から、警備員が地域の小学生にAEDの使用方法やビニール袋を使った応急手当の説明なども行った。

公園での訓練は市内自治会と共同で実施。同社警備員の誘導による避難訓練を行い、その様子を警備員が装着したウェブカメラで本社会場に設置したモニターに生中継した。

青木勲会長は講評で同社警備員に「近年は震災や水害が多発している。日ごろから技能訓練を行うとともに、災害時に落ち着いて行動できるよう“心の訓練”を続けてほしい」と語った。

同社は2016年に小山市と災害時における応急対策業務協定を結んだのを皮切りに、18年には栃木県、今年5月には宇都宮市と同様の協定を結んでいる。

特集ワイド 〝警備業発〟防災用品2019.9.11

台風や豪雨、地震、火山噴火など自然災害が発生しやすい日本列島――。生活安全産業として生命・身体・財産を守ることを生業とする警備業は、防災と減災に向けた取り組みも求められている。警備業務の付加価値として防災事業に注力する警備会社を取り上げ、“警備業発”の防災用品や防災サービスを紹介する。

2人乗りシェルター セコム

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、防災業界のトップ企業「能美防災」と業界第3位「ニッタン」のグループ会社2社とともに、防災事業に力を入れている。

「あんしん防災シェルター」は、左右のハッチから2人まで入ることができるFRP(繊維強化プラスチック)製のシェルターだ。30トンの荷重に耐えられる構造で、建物が倒壊したときでも救助隊などに助けてもらえる確率が高い。津波や洪水に巻き込まれても沈むことはなく、救助されやすくなる。ハッチが上を向く「自動スイング構造」を備え、シェルター内の側面にある棚には、ヘルメットやライフジャケット、携帯酸素(5時間分)、保存水などの災害備蓄品が格納されている。本体150万円(税別、別途運送・設置料金が必要)。

同社は防災用品セット「セコム・スーパーレスキュー」も販売している。「1人が被災直後数日生き延びられること」を目的としたセットで、各用品は東日本大震災や阪神・淡路大震災などで実際に被災した社員150人にアンケートを行い厳選した。実用性の高いアイテムを揃えた「スタンダード」と、高性能な防寒具やLEDソーラーランタン、簡易エアマットを追加し機能性を追求した「プラス」の2種類から選ぶことができる。スタンダード1万8000円、プラス2万7000円(どちらも税別)。

「ほかほか非常食セット」は、製造から5年間保存が可能な約10食分の非常食セット。同社はユーザーアンケートで多数寄せられた「被災時にも温かいものが食べたい」という意見に注目し、火を使わない発熱剤「モーリアンヒートパック」を用いて“ほかほか”の食事を実現させた。内容はアルファ米、保存水、クラッカー、ソフトパン、ようかん、キャンディーなど。専用ボックス(縦316×横216×高さ219ミリメートル)で届けられ、そのまま備蓄可能だ。5800円(税別)。

ポータブル畜電池「パワーイレ・スリー」は、災害による停電時に情報収集や通信手段の確保に必要となるテレビやパソコン、スマートフォンに電力を供給する。テレビ1台とノートPC2台、携帯電話4台を同時に約8時間使うことが可能だ。ほかにスマホ約20台分が充電できる大容量バッテリー「エリー・ワン」もある。パワーイレ・スリー90万円、エリー・ワン12万8000円(どちらも税別)。

「水面に浮けば助かる」 ドリーム

ドリーム(静岡県浜松市、今釜伸也社長)は、防災フローティングジャケット「キズナックス」を自社で開発、販売している。

キズナックスは、衝撃を吸収できるウレタン素材を採用。これまでの“空気式”では小さな衝撃でパンクする恐れを解消した。ジャケットに備えた2個のポケットには、食料や携帯、貴重品を防水機能がある箱に入れて濡らさずに収納できる。

今釜社長は東日本大震災発生の1か月後から宮城県陸前髙田市内の被災地でガレキを撤去する支援活動に参加した。そのときに生還した漁師2人から「津波に巻き込まれたが、水面に浮いていたから助かった」という話を聞き、フローティングジャケットの開発を始めた。自ら企画・設計し2012年1月に完成、震災1年後の3月11日に発売した。

同社は懸念される東海地震への備えとして、浜松市内の児童養護施設「清明寮」や児童施設「こども園」にキズナックスを寄付するなど、地域貢献活動も続けている。本体8000円(税別)。

水害被害を最小限に ヨーク警備

ヨーク警備(東京都千代田区)は、セブン&アイホールディングスグループの警備会社で同社は施設警備業務を行う一方、防災用品の代理店販売も行っている。

「ウォーターゲート」は、台風や豪雨などの水害被害を最小限に食い止めるための止水シートだ。3種類の高さと長さに対応可能で、複数のウォーターゲートを連結させることで、さらに長さを伸ばすことができる。設置・撤収はそれぞれ数分で行うことができ、再利用が可能。土のう数百袋分の役目を即座に実現する。価格は10万9000円より(税別)。

「災害救助工具袋セットB―Ⅱ台車付きタイプ」は、災害緊急時の必需品である救助用工具セット。内容品は、剣先スコップ、番線カッター、バラシバール、レスキューアッキス(斧)、折り込み鋸、両口ハンマー、工具セット(55点)、救急セット、レザーグローブ、ゴーグル(マスク・メガネ併用タイプ)、マスク、タオル、収納袋(ハードタイプ)。価格は7万8000円(税別)。

「ポータブル水洗トイレ24リットル」は小さく、軽く、持ち運びができる水洗トイレだ。汚物は簡単操作でしっかり密封する。連続使用回数は約60回。別売りで専用の手すりもある。耐荷重200キログラム、サイズ370×420×410ミリメートル、重量約5.1キログラム。価格は3万4500円(税別)。