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クローズUP

「熱中症」全国で多発2019.8.21

警備員2人が死亡

全国で熱中症の発生が相次いでいる。7月26日には新潟県燕市内の工事現場で交通誘導警備中の男性警備員(53)が熱中症の疑いで死亡した。午後2時ごろ、道路端の草むらに倒れているのをダンプ運転手が発見。ドクターヘリで病院に搬送されたが同日夕方に死亡が確認された。新潟県警備業協会(野澤慎吾会長)は29日、会員に熱中症防止対策の強化を通知した。

8月2日には東京都江東区内の公園の護岸改修工事で交通誘導警備を行っていた女性警備員(46)が倒れているのを発見、その後、死亡が確認された。体調不良のため休憩していたが、発見時は意識がもうろうとした状態だった。

栃木県内では道路工事現場で車の中で休憩していた男性警備員(68)が意識のない状態で見つかるなど、警備員の死亡や病院搬送が続発している。水分・塩分の確実な摂取、適度な休憩の確保など熱中症予防対策の徹底が望まれる。

特集ワイド ラグビーW杯警備「安全」を最優先に2019.8.21

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の警備では、安全が最優先される。会場内ではテロを防ぐための正確な手荷物検査が、会場外では会場までの観客や関係車両の円滑な誘導に加えて緊急時の安全確保が求められる。警備を担当する警備各社は社内での研修を重ね技能向上を図り、テストマッチには本大会と同じ体制で臨むほか、自治体による災害時避難訓練への参加などで問題点を明らかにして本番に備える。

ラグビーW杯日本大会のオフィシャルスポンサーでもあるセコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、開幕戦が行われる東京会場と決勝戦がある横浜会場の全15試合を警備する。それぞれの会場でパートナー企業約30社との警備業務となる。

セコムは、2018年9月にW杯組織員会と警備契約締結後に社内に「ラグビーワールドカップ2019推進プロジェクト」を設置した。契約締結後にまず手掛けたのは効率的かつ安全を確保できるスタジアム警備の研究だ。

プロジェクトの池添諭サブリーダーは「はじめに、どのようにしてスクリーニング(手荷物検査)をすれば安全を保て、かつ円滑に観客を入場させられるのかを考えた。さまざまな手法を試し、多くのスポーツイベントを視察した」と語る。

現在は手荷物検査の研修に力を入れており、「研修所は常に手荷物検査研修でフル稼働だ」(池添サブリーダー)という。検査には手荷物に手を入れて調べるものと入れないものとがあり、W杯では組織委の方針で手を入れることとなった。この検査は時間がかかるため、迅速化するためのトレーニングに時間を割いている。ハンディータイプの金属探知機によるボディーチェックも行う。女性客は女性スタッフが検査する予定だ。

シミズオクト(東京都新宿区、清水太郎社長)は、前回のW杯がイングランドで開催された2015年から、過去のW杯の開催状況や会場運営などを解説する「社内研修会」を開いてきた。本社やグループ会社の関係社員が対象で、日本大会で会場の警備業務と運営業務を受注する前から、各部署がW杯に向けて取り組む機運を醸成し、知識や情報の共有を図ることが目的だった。

W杯を担当する営業開発部の小米良(こめら)直樹次長は「部署は違っても一体感を持って取り組むことが大切になる。警備員と案内スタッフそれぞれが業務を行う中で、テロなどを未然に防ぐためには案内スタッフであっても不審者・不審物に気づいたら迅速な通報を心掛けるなどの教育を行っている」と話す。

技能面では警備員のスクリーニング力を高めるため、各地の支店やグループ会社にハンディー型・ゲート型の金属探知機を用意し、訓練を重ねる。外国人対応では、自社の警備経験を基に“イベント警備で役立つ英会話”の文例集(ポケットサイズ)を作成し、警備員の英語力向上を目指す。

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は外国人の観客が多いと見込まれることから、警備員への英語教育を行うほか翻訳機を携帯して備える。7月27日には、大会会場の釜石鵜住居復興スタジアムで行われた日本対フィジーのテストマッチを本大会と同じ体制で警備した。

警備業務は複数のパートナー企業と行うため、会社ごとの指揮命令と全体との連携が鍵となる。W杯を担当する東京オリンピック・パラリンピック担当の吉田浩儀執行役員は「日本で行われた五輪や国際会議、国民体育大会の警備実績があり、イベントでの複数の警備会社が参加する部隊を組むことには慣れている」と語る。

各会場へのアクセスは徒歩と公共交通機関のみ認められており、全会場で近隣の鉄道駅や街中からシャトルバスを運行する。会場外警備ではシャトルバス駐車場から会場までの誘導が主な業務となる。

岩手・釜石では会場へのバスによる交通輸送と会場外の警備はJTBが受注し、警備業務はALSOK岩手(盛岡市、瀧川誠社長)が行う。

会場は東日本大震災で甚大な津波被害を受けた地域にある。スポーツを通して街ににぎわいを呼び込み、復興のシンボルとなることを願って17年4月に起工し18年8月に竣工した。警備に当たっては、会場への誘導に加え災害への備えも重要となる。地震や津波が発生した場合は、警備員は警察・消防と連携して会場から1キロメートル離れた高台にある2か所の避難場所へ避難誘導する。

会場では7月11日に警察、消防、自衛隊など54機関の約1000人が参加しテロ対策訓練も行われた。ALSOK岩手から警備員など56人が参加した。ドローンによってスタジアムに化学物質が散布され、駐車場では爆発が起き、「ファンゾーン」が設置される釜石市民ホールでは不審物が発見されたという想定で行った。警備員は観客席と場外に配置され、観客の避難誘導を行って安全を確保した。

ALSOKは普段は東京で2号警備業務を行わないが、東京会場では交通誘導警備や雑踏警備を伴う会場外警備を手掛ける。吉田執行役員は「会場は京王線飛田給駅徒歩5分という立地のため、電車での来場が多いと予想される。当社グループはラストマイルや交通誘導警備の経験は少ない。ラグビーワールドカップで経験を積み、来年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会での警備に生かしたい」と語る。

大分はJTBが会場までのバス手配や警備などを一括して受注し、警備員は地元警備会社で構成する大分県警備業協同組合(藤田政宏理事長=太陽警備保障)が動員する。最終的な警備計画が決まっていないため、現時点では全組合員20社に警備概要を案内して参加を呼び掛けている段階だ。必要な警備員数が固まったのちに募集を行う。JR大分駅や別府駅など6か所からのバスが会場から10〜25分離れた4つの臨時駐車場まで往復。バスや観客の誘導が主な業務となる。