クローズUP
2024新会長2024.06.21
東京・澤本氏、秋田・鈴木氏、青森・柿﨑氏
5月29日から6月11日、17都県警備業協会で定時総会が開催され、東京、秋田、青森で新会長が誕生した。課題克服を念頭に、それぞれ協会運営の抱負を述べた。
東京警協
2年務めた村井豪会長(ALSOK)が退任し、澤本尚志副会長(セントラル警備保障・CSP)が新会長に就任した。機械輸送警備業務部会長を兼ねる。
澤本新会長は「引き続き業界のイメージアップを図っていきたい。協会が会員相互の警備に対するビジョンや信念を語り合う場になればと考えている」とコミュニケーションを大切にする考えを示した。
村井前会長は「東京2020を重大インシデントゼロで完遂し、50周年の節目も祝った。東京警協は警備員数10万人を超える大組織で、期待は大きい。澤本新会長の下、一層発展し業界をけん引していただきたい」とエールを送った。
新役員は次の通り(敬称略)。
【会長】澤本尚志 67歳。1979年国鉄入社、2012年JR東常務取締役。15年JR東日本ビルテック社長。17年CSP副社長、18年同社長、24年5月同会長。22年東京警協副会長。
【副会長】稲葉誠(セコム)、中田文彦(ジャパンパトロール警備保障)、宮島裕(ALSOK)【常任理事】阿部秀樹(JTS)【理事】黒田奈苗(パシフィック警備)、曾田幸子(元東京消防庁)
秋田警協
2020年から4年務めた辻本光雄会長(ALSOK秋田)が退任し、11年から6期12年副会長を務めた鈴木伸也氏(日本海警備保障)が新会長に就任した。
総会に先立ち辻本前会長は「秋田警協のマスコットキャラクター・ガリットの活用による警備員の募集支援、広報活動に力を入れ、資格取得に向けた教育事業など会員各社の期待に沿う活動に引き続き皆さんのご理解とご協力をいただきますようお願いします」と呼び掛けた。
鈴木新会長は「辻本前会長に残してもらった道筋を踏まえて課題に取り組みつつ、5年、10年先の警備業界がより良くなるための行事や活動に取り組んでいきたい」と抱負を語った。
新役員は次の通り(敬称略)。
【会長】鈴木伸也 51歳。1991年、全日本ガードシステム(東京)入社。98年同退社。同年日本海警備保障入社。同年中小企業大学校入学。99年同校卒業。2002年同代表取締役。11年5月、秋田警協副会長。
【副会長】松本安之(ALSOK秋田)
青森警協
10期21年にわたって会長を務めた柿﨑忠雄氏(青森綜合警備保障)が退任し、柿﨑忠俊氏(同)が新会長に就任した。
柿﨑前会長は「警備員の『質の向上』と『地位向上』のための教育をはじめ、処遇改善や労働災害防止に力を注いできた。皆さまのご尽力があって、警備業界が社会的に大きく評価される『生活安全産業』へと成長したことは感無量。警備業のあり方は今後数年で大きく変化していく」と述べた。
柿﨑新会長は「慢性的な人材不足をはじめ、適正な警備料金、労働災害などさまざまな課題を抱えている。未来に向けて健全に発展していくためには、当協会が一丸となって取り組む必要がある」と語った。
新役員は次の通り(敬称略)。
【会長】柿﨑忠俊 55歳。2002年青森綜合警備保障入社、常務取締役、専務取締役を経て22年代表取締役社長就任。18年青森警協青年部会顧問に就任。
特集ワイド 警備業の労災防止2024.06.21
労働災害による死亡者数、死傷者数(死亡と休業4日以上の合計)が昨年、警備業では過去10年間で最多となった。業種を超えた人材獲得競争の中、就業先として選ばれる上でも労災防止は重要課題だ。業界団体や警備会社は対策を講じているが、交通誘導警備業務での受傷事故防止などを一層進める必要がある。リスクが高まる時期を迎えた熱中症への対策も求められている。
厚生労働省が5月27日に発表した2023年の労働災害発生状況(確定値)によると、全産業の労災による死亡者数は755人(前年比19人減)で過去最少、死傷者数は13万5371人(同3016人増)で3年連続の増加となった。
警備業では、死亡者数が前年比10人増の35人、死傷者数が同248人増の2178人。死亡労災の原因別では「道路交通事故」が16人で最も多く、次いで「熱中症」6人、「はさまれ・巻き込まれ」4人だった。
受傷事故マニュアル作成
全国警備業協会(村井豪会長)は、昨年作成した「受傷事故防止対策マニュアル」をホームページで公開している。同マニュアルでは労災事例の1つとして、道路工事現場で一般車両の交通誘導に当たっていた警備員が、作業中の建設機械(ドラグ・ショベル)にひかれたケースを紹介。運転手が後方を十分確認せずに建設機械を後退させたこと、本来入ってはいけない機械の作業範囲に警備員が移動したことなどが事故につながったとしている。
警備業の死亡労災の原因で道路交通事故が目立つ中、同マニュアルでは交通誘導時における事故防止のポイントをまとめている。▽車両の運転手からよく見える場所に立つ▽分かりやすく、大きな動作で合図を行う▽自己防衛を心掛ける▽緊急時に退避できる場所を確保しておく――などを示している。
そのうち自己防衛では、運転手が脇見・漫然運転をしている可能性があるとして、周囲の状況を警戒する必要性について指摘。接近する車両に「誘導」が伝わっていることを過信せず、車両の動きに注意を払うよう呼び掛けている。
全警協は今年度、同マニュアルの普及啓発セミナーを必要に応じ、都道府県協会で開く。
5人死亡の北海道 今年はゼロ継続
北海道では昨年、警備業で4件(3月、5月、7月、12月)の死亡労災が発生、5人が亡くなった。
昨年3月と5月の事故では、工事現場で一般車両の交通誘導を行っていた警備員が、後進してきた工事用車両(3月=タイヤローラー、5月=トラッククレーン)に背後からひかれた。
昨年7月の事故では工事現場の出入り口で、資材を積んだトラッククレーンの後進を誘導、段差解消のスロープがずれたため直していたところ、停車していたトラッククレーンが後進を始め、ひかれたという。
北海道労働局は同7月24日、「建設工事現場の交通誘導警備に関する安全総点検」を北海道警備業協会(長尾昭会長)に緊急要請。工事の元請が行う朝礼に警備員を参加させることや、運転手(工事用車両)の「死角」となる場所に入らないよう警備員教育を実施することなどを求めた。要請の4日後、北海道警協は緊急決起集会を開いた。
道内では昨年12月、道路工事に係る交通誘導の準備でトラックから降りた警備員2人が、後方から来た居眠り運転とみられるトレーラーにはねられ死亡する事故が発生。北海道警協は1月、労災防止の実務担当者研修会を開き、全警協のマニュアルなどを活用した。
今年に入り、道内では警備業の死亡労災は4月末時点で起きていない。長尾会長は「対策が浸透している」とみる一方、「気の緩みが事故につながる。労災防止のための情報発信を続けていく」と話す。協会として「全道一斉安全パトロール」などを計画している。
他の警協では、警察から講師を迎え、車の運転席からの死角について実地研修を行った事例もある。
熱中症対策、早め早めに
東京労働局(美濃芳郎局長)は6月4日、千代田区内の同局で「職場における熱中症予防対策会議」を開いた。熱中症の発生が多い業界の団体を集めて開催。東京都警備業協会(澤本尚志会長)など8団体に対策の徹底を要請した。
会議では、同局の岡田直樹労働基準部長が「今年も猛暑が予想されている。熱中症の発生がピークを迎える7月を待たずに、早め早めの対策を進めていただきたい」とあいさつした。東京警協のほか、東京建設業協会や東京ビルメンテナンス協会などに順次、局長名の要請書を手渡した。
要請書では(1)計測器を使った暑さ指数(WBGT)の把握と、その値に応じた熱中症予防対策を適切に実施する(2)少しでも本人や周りの人が異変を感じたら「病院に搬送する」「救急隊を要請する」。病院搬送や救急隊到着までの間、水をかけて全身を急速冷却し体温の低減に努める(3)作業管理者・労働者に労働衛生教育を行う(4)熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病(糖尿病、高血圧症など)を有する人に配慮する――の4点について、業界団体と会員会社が一体となって取り組むよう求めた。
同局管内では2023年、熱中症による休業4日以上の死傷者数が110人(前年比42人増)となり、1998年の集計開始以降で最多となった。業種別では建設業が24人(同12人増)で最も多く、次いで警備業が23人(同7人増)だった。
死者ワースト2
厚生労働省は5月31日、職場における熱中症について、2023年の発生状況(確定値)を発表した。警備業の死亡者数は6人で前年と同数。死傷者数(死亡と休業4日以上の合計)は114人で前年比23人の増加となった。
厚労省のまとめによると、全産業の死亡者数は31人(前年比1人増)、死傷者数は1106人(同279人増)。23年は記録的猛暑だった。
業種別でみると、死亡者数は建設業(12人)、死傷者数は製造業(231人)がそれぞれ最も多かった。
業種別で警備業は、死亡者数で2番目、死傷者数で5番目に多い。道路工事現場で交通誘導業務に従事していた警備員らが亡くなった。
体調が悪くなって工事現場を早退し、帰宅途中の駅で倒れ、病院に救急搬送されたものの、翌日に病院で死亡したケースもあった。
全産業の死傷者の時間帯別発生状況は、午前11時台が最も多く、次いで午前9時台以前、午後2時台。年代別では65歳以上が最多で、50〜54歳、55〜59歳が続いた。
職場での熱中症対策では厚労省や中央労働災害防止協会、全国警備業協会などの主唱による「クールワークキャンペーン」が実施されている。