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特集ワイド セルフレジの不正2023.09.11
買い物客が自ら購入品の読み取りから精算までを行う「セルフレジ」。業務の省人化につながることからスーパーマーケットなどで導入が進む一方、一部の不正行為が課題となっている。日本万引防止システム協会(JEAS・東京都新宿区、稲本義範会長)はセミナーを開いてセルフレジの不正手口や対策などを解説した。不正行為の拡大を阻止する取り組みを取材した。
JEASは8月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「営業・マーケ/広告・販促/店舗・ECDXPO」(主催=ブティックス)の会場内で「セルフレジ不正をどう防止するか・最新テクノロジーとお店でできる対策集」と題したセミナーを開いた。
講師はセキュリティー事業を展開する三宅(広島市安佐南区、三宅正光代表取締役)東京本社常務取締役でJEAS・DX推進プロジェクトリーダーの田中崇氏が務めた。セミナーはJEASが制作しセミナー会場で聴講者に配布した「セルフレジ不正防止のための冊子」に沿った内容で、要旨は次のようなものだった。
セルフレジには(1)セミセルフレジ(2)フルセルフレジ(固定式セルフレジ(3)移動式セルフレジ――の3種類がある。「セミセルフレジ」は、商品登録(バーコードスキャン)を店舗のレジ係が担当し客が精算する。スーパーマーケットに始まり、ドラッグストアやコンビニエンスストアにも導入が広がった。「フルセルフレジ」は、商品登録も支払い精算も客が行う。「移動式セルフレジ」は、客が売り場を移動しながらその場で商品を登録し、レジでは精算のみを行う。使用する端末は店舗が用意する場合と客のスマートフォンなどを利用する場合がある。
コロナ禍で対面・接触を敬遠する状況もあり、2022年の導入率はセミセルフレジ75.1%、フルセルフレジ25.2%、移動式セルフレジ7.6%と年々上昇している(全国スーパーマーケット協会調べ)。
セルフレジのメリットは接触機会の減少のほかに客がレジに並ぶ時間の短縮や人手不足の解消などがある。一方、リスクは盗難などによる損失の増加、新たな不正の発生、使いこなせない高齢者の不安などが挙げられる。各店舗にとって、セルフレジは導入促進と不正対策の両立が重要となる。
フルセルフレジの不正には、「スキャン飛ばし(スキャンしたふりをする)」「カート下の商品隠し」「未精算商品の持ち帰り」「プリセットキー(バーコードがない商品のためのキー)の不正操作」などがある。それらの不正を防ぐ対策としては、次のような取り組みが有効だ。
▽レジまわりに防犯カメラを設置し撮影していることを掲示する。
▽大型のディスプレイを天井から吊して設置したり、セルフレジ一台一台に小型モニターを置いて手元を客本人に見せることで不正を抑止する。
▽不正行為の動作をAI機能搭載カメラで検知する。
そのほか、使用していないレジは通過できないようにする、レジ手前(未精算)とレジ後方(精算済み)の間を容易に行き来できないようにする、入口と出口の動線を分ける、などの物理的コントロールも必要だ。
プライバシーへの配慮として、防犯画像を撮影する場合「防犯カメラ稼働中」などの告知を防犯カメラの近くの買い物客から見える位置に掲示する。
セルフレジの近くに待機する担当サービス係の事前教育も重要だ。サービスを優先する中で不審な客を発見した場合は、定められた対応を行うよう指導する。利用客の表情観察は重要で、担当サービス係や周囲をチラチラ見る場合は「お手伝いしましょうか」など積極的な声掛けを行う。不正が疑われる違和感のある客の特徴は記録して情報を共有しておく。