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テロは許さない2020.12.11

「彩の国ネット」初の合同訓練

埼玉県警察大宮警察署(さいたま市、伊古田晴正署長)は11月26日、さいたま新都心のバスターミナルで「テロ対策『彩の国』ネットワーク」の初の合同訓練を行った。同ネットワーク加盟の46事業者・団体のうち33団体・約100人が参加した。

警備業からは埼玉県警備業協会の大宮支部(炭谷勝支部長=トップセキュリティ)の炭谷支部長など役員3人が、また、会場近くの商業施設で施設警備を行う警備員などが訓練に参加、テロへの対応を学んだ。

訓練内容は、海外テロ事例の紹介や爆発物の種類の解説、爆発物などの入った不審物を見分けるポイントと発見時の警察への適切な通報方法など。商業施設に見立てたバスターミナル待合施設内に実際に不審物を置き、対応方法を大宮署警備課担当官が実演しながら解説した。現場に警察官到着後に行われる立入規制や防護措置など一連の流れの実演や、警察犬による不審者制圧のデモンストレーションなども行われた。

県内唯一のN・B・C(核・生物・化学)災害発生時に活動する特殊災害対応部隊が置かれている、さいたま市消防局の北消防署(さいたま市北区)は、防護服や分析資機材、特殊車両を展示した。

「テロ対策『彩の国』ネットワーク」は、県警本部が東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、民間事業者と行政が連携したテロ未然防止や発生時の協働対処体制構築などのために2015年に設立。管内に五輪競技会場やキャンプ地などがある警察署でも結成している。大宮署には16年に、JR大宮駅とバスケットボール競技会場近くのさいたま新都心駅周辺の38事業者・団体が参画してネットワークを構成。これまで協議会(会議)の開催や個別事業者の訓練を行ってきたが、今回のようなネットワーク加盟者合同での訓練は初めて。

近畿地区連 専務理事会議開く2020.12.11

五輪、就職氷河期事業で協議

近畿地区警備業協会連合会(宇多雅詩会長=京都警協会長)は11月25日、京都警協内で専務理事会議を開いた。事務局長の小林茂京都警協専務理事など2府4県の専務理事が出席した。

新型コロナの影響で延期、10月から再始動した東京五輪・パラリンピック競技大会警備には、府県の警備業者は警備員派遣に前向きだ。しかし、大会組織委員会が条件としている「1社10人以上」が課題。このため兵庫警協の今西義高会長は11月12日の「警備の日全国大会」に出席した際、組織委の岩下剛警備局長に条件緩和を申し入れた。岩下局長からは「緩和する方向で検討したい」との回答を得たことが報告された。

21年2〜3月に大阪・京都で実施される、全国警備業協会の厚生労働省からの委託事業「就職氷河期世代向け短期資格等習得コース事業」について、受講生募集に苦慮していることが判明。本来の対象である無職者に加え、加盟社に非正規雇用されている警備員の受講を促すことになった。

全警協が進める「eラーニング」について、近畿2府6県の警察本部警備業担当者の見解を調査。「詳細を承知していない」「リモート教育は同時双方向での意思疎通が条件」「警備員指導教育責任者が同席しない教育は認められない」――などの回答が寄せられたことも報告された。

コロナ禍の影響で地区連各種行事が中止なったことから、2021年度の日程調整と当面の懸案事項についても意見交換した。

ALSOK、技能レベル競う2020.12.11

日常の経験生きてくる

ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は11月13日、11回目となる「ALSOKグループ協働体品質向上競技大会」を都内2か所で開いた。今回はコロナ禍のため予選の方式や本選運営を変更し、新たに感染症への対応を競技種目に加えるなど例年とは大きく違った大会となった。コロナの拡大が止まらない中での開催となったが、大会運営事務局は徹底した感染対策を行った。

大会は業務のレベルを競い合って品質向上につなげるとともに、普段は目にする機会がないグループ他社の手順を見学して刺激を与える狙いで2010年から毎年開かれている。

村井温会長は開会式で「警備業はコロナ禍でも国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な事業と位置付けられ、グループ各社は十分な感染防止策を講じつつ、可能な限り事業継続して社会の期待に応えています。そのため、このような状況下にあっても業務の技能を高めることを目的に、十分な感染対策を講じた上で大会を実施することを決めました。選手は大会の意義を十分に理解し、普段の訓練の成果を発揮するとともに、事業所に戻ってからも同僚・後輩の技能の向上に寄与することを願います」とあいさつした。

大会には全国の地域本部の予選を勝ち抜いた従業員が参加した。予選は毎年、それぞれの本部で行われるが、今年はコロナ禍のため方式を変更。実技を録画した映像による審査や筆記試験を行った。種目数も例年は20余りあるものを業務量が多い11に絞り、選手は昨年の250人から145人へと半数近く減らした。

感染症拡大を受けて新たに「感染症対策消毒要領」を競技に加えた。業務では行っていないが、地方の支社で感染の疑いがある従業員が発生(結果は陰性)したため知識を身に付けてもらおうと実施を決めた。

参加者に防護服の着用や消毒の手順をあらかじめ説明した上で、警備業務を行っている企業で従業員に感染を疑われる症状が出たと想定。事務所の机やパソコン、ロッカーなどを消毒する手順の正確さを競った。

本選はこれまで東京研修所(東京都稲城市)の1会場で行っていたものを、本社(東京都港区)も加え分散開催とした。遠方からの参加者は東京研修所に前泊していたが、人との不要な接触を防ぐために日帰りで参加するように呼び掛けた。そのため会場までの距離や公共交通機関のスケジュールを考慮して、競技順を決めた。

健康管理も徹底した。参加者には1週間前から体温を報告してもらい、当日も検温を行うとともに手指の消毒を徹底。競技に使う資機材も1人の演技が終わるたびに消毒を行った。

開会式は例年、参加者全員が出席していたものを代表者のみが参加した。一人ひとりの距離を十分に確保、全ての扉を開放して「3密」を防いだ。その他の参加者は別室で中継映像を視聴した。

選手以外の応援や見学のための来場は見合わせてもらった。選手による見学も行われず、自らの競技までは指定された場所に待機。演技が終了すればすぐに会場を後にした。

それぞれの競技では高いレベルの演技が披露された。中でも手荷物検査部門は空港保安業務を手掛けている会社が多いことや、昨年のラグビーワールドカップの警備を経験した従業員がいたため、高度な技術の競争となった。

検査は大規模イベントの観客の入場時を想定し、4組の客に対応した。求められた手順は、車いすの客にはまず金属探知ゲートを通過させて、ボディーチェックによる検査を実施。客を不快にさせないように、体のどの箇所を調べるかを説明し、肌に触れる可能性があることも了解してもらうというものだった。また車いすのポケットに隠されたナイフの発見も求められた。

残りの客は外国人と杖の使用者、手荷物に拳銃を入れた客だった。英語による対応や歩行サポート、X線機器で銃を発見して即座に警察を呼ぶ手順を審査された。

参加した10社中、ALSOK福島(福島県郡山市、前田泰彦社長)が3回目の第1位となった。参加した4人全員は福島空港の保安警備業務を行っており、日ごろの業務での経験が生かされた。同社空港保安隊の石井清二隊長は、予選や本選に出場する前に過去の優勝メンバーがアドバイスを送るなど会社一丸となって臨んだことも結果につながったという。

大会の企画・運営を担当したセキュリティーサービス第一部警備運用企画課の伊藤聖一朗課長代理は「全ての競技で全社共通の対処マニュアルに応じた動作ができているかを審査しました」とした。

競技では更に、想定外の出来事への対応も求めた。手荷物検査では不審者が強引に保安所を通過しようとしたため、警備員は通路をふさいで逃走を阻止することが必要となった。

各社の選手は拳銃の発見や通報は素早く行うことはできたが、立ち去ろうとする不審者への対応で戸惑うケースも見られ、対応が分かれた。伊藤氏は「想定外の出来事も採り入れたことで、何が起こるかわからない日常業務に生かされることを期待している」と述べた。