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中部地区連「特別講習」活発な論議2021.12.01

岐阜警協幾田会長「認証制度」を提案

中部地区警備業協会連合会(会長=小塚喜城・愛知警協会長)は11月15日、石川県加賀市内で6県の会長と専務理事による秋季連合会議を開いた。全国警備業協会から中山泰男会長、黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。会議の主テーマは「特別講習」。副題は「効果的・合理的な特別講習の運営と合格率向上の方策について」とした。

小塚会長は「特別講習の円滑な運営と合格率向上による有資格警備員の輩出は、警備員の知識と能力の底上げに資するものです。更には処遇の改善、業界全体のステータスと信頼の向上につながる重要なテーマであると考えます」と述べた。

地区連各県協会から事前に提出された報告書を参考資料として、特別講習の現状、運営上の問題点、講師派遣と受講者に対する警備会社の理解の確保、今後の課題と対応――などについて活発な議論が交わされた。主な発言は以下のようなもの。

「交通誘導は希望者が多いが施設・雑踏・貴重品は減少傾向にある」「事前の自社講習が合格率を高めている。さらに推奨したい」「計画的な若手講師(女性を含む)の育成が急務。会社経営陣の理解を深めたい」「講習会場の賃貸料が高額になっている。安価な施設確保に努力しなければならない」――。これに関連し岐阜警協の幾田弘文会長は、特別講習の検定合格者について、全警協が認証制度を新設してはどうかと提案した。

中山会長は、“幾田案”を受ける形で「全警協は、つねに協会会員のために何ができるかを念頭に置いています。警備の質を高めることは是非とも必要です」と賛意を表明した。黒木専務理事は「実現に向けて早急に取り組みたい」と決意を述べた。

幾田会長の提案

検定合格者に与える名称は「警備士」。検定バッジを作成して制服の襟元などに付けてもらう。会社は処遇面で警備士資格手当を支給する。一部の会社では、警備員を警備士と呼んでいると聞くが、有資格者は誇りに感じ、責任者としての自覚が増すと思われます。

警備の質を上げることは、より良いサービスの提供となり、「わが社は警備士を配置します」と警備料金向上にも役立つでしょう。

この取り組みが全国に広がれば、減少が伝えられる特別講習の受講者と合格者も増え、講師陣の充実も期待できるのではないでしょうか。

「不審ファイル開くな!」2021.12.01

警視庁「エモテット」に注意喚起

警視庁は、国内外の多数の企業に被害を与えた感染力の高いコンピューターウイルス「エモテット」によるサイバー攻撃再開を受け、被害防止策の徹底を呼び掛けている。

「エモテット」は電子メールの添付ファイル(ワード、エクセルなど)に仕掛けられ、感染するとPCのデータが遠隔操作により流出、有害プログラムがPCに侵入しネットワークでつながる組織内のデータが盗み取られる恐れがある。

同庁サイバーセキュリティ対策本部は11月16日、公式ツイッターで「ウイルスメールに要注意!」として次のような注意喚起を行った。

▷ワードやエクセルの「コンテンツの有効化」「編集を有効にする」をすぐにクリックしない
▷メール本文などのURLをすぐにクリックしない
▷Zipファイルが添付されている時は安易に開かない
▷OSやセキュリティーソフトを最新に――などだ。

サイバー攻撃は国際的に増加が続き、大企業に限らず中小企業も狙われる。同対策本部の担当官は「警備業者は、警備計画などの重要情報が流出してしまうことのないよう万全の対策が求められる」と強調した。

エモテットは2019年10月から20年にかけて被害が急増。その後沈静化していたが再び攻撃が確認された。

特集ワイド レガシーを伝える2021.12.01

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は警備業界に多くのレガシー(遺産)を残した。今後は貴重な経験を次代に継承する取り組みが課題となる。大会警備に携わらなかった警備会社がレガシーを活用していくことも重要で、警備業界全体で考えていかなければならない。

東京2020における最大のレガシー(遺産)は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体(警備JV)が「オールジャパン」体制を組み、大会警備を成功に導いたことだ。

参加各社が結束し1社も脱落することなく大会警備をやり遂げたことは、大会前は民間警備に懐疑的だった一部の声を沈黙させ、国内外で日本の警備会社のステータスを飛躍的に高めることにつながった。

東京2020の具体的なレガシーについて、全国警備業協会の中山泰男会長は「女性警備員や外国人警備員などが活躍し、大会基本コンセプトの多様性と調和を実現」「eラーニングによる事前教育や上番・下番報告システムなどITをフル活用」「キャンセル料やペナルティーを明確に定めた適正な契約締結と単価獲得の実現」――の3つを指摘している。

☆IT活用

これらのレガシーは今後の警備業務に反映させ、しっかり継承しなければならない。ITの活用では、ウェアラブル(身体装着)カメラ約200台を警備員が装着し、監視カメラの死角を補完する役割を果たした。ウェアラブルカメラを警備に本格的に活用した初の事例であり、既に鉄道の駅構内・車両警備などで応用が進んでいる。

キャンセル料やペナルティーを明確化した契約や東京2020の警備単価も生かしたい。同契約をモデルにした標準契約書式を作製し今後の警備契約締結に活用していけば、全警協が取り組むアクションプランの1つ「経営基盤強化・単価引き上げ策」の実現にもつながる。

☆仕事への誇り

一方で「可視化できないレガシー」もあると、警備JVの杉本陽一事務局長と村井豪幹事長は指摘する。それは「大会警備に携わった警備員が得た警備という仕事に対する誇り」「大会1年延期や無観客およびコロナ感染拡大など極めて異例の状況を乗り切った実績と自信」「オリンピック・パラリンピックという世紀のイベント運営に携わった経験値」などである。

こうしたレガシーの本質は、大会警備員をはじめとする関係者それぞれの経験則の中にある。レガシーは経験者自らが語り、呼び掛け、実務の中で啓発しながら継承する必要がある。

553社が参加した警備JVは首都圏1都3県の警備会社が3分の2を占め、それ以外の道府県は参加企業が限られていた。各地域で経験者が貴重な体験を語ることは、未参加の警備会社へレガシーを伝えるという部分でも意義が大きい。

大会警備に参加しなかった(できなかった)警備会社は、単独でレガシーを継承する術がない。それを補うには、警備JV参加企業に体験を開示する都道府県警協などの働きかけ、レガシーの要点をまとめたリーフレット製作などが必要となる。

多くのレガシーを着実に継承することが、1964年の東京オリンピック・パラリンピック後を想起させるような警備業の飛躍につながるはずだ。