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クローズUP

2020年の最低賃金2020.08.01

現行水準が妥当

今秋発効する2020年度の「地域別最低賃金」の改定額の目安を審議していた厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月22日、加藤勝信厚生労働相に「引上げ額の目安を示すことは困難、現行水準の維持が適当」とする答申を行った。新型コロナの感染症拡大による中小企業や小規模事業者の厳しい経営状況を重視した。新たな最賃額は、現行と同額となる見込み。

2020年度の最低賃金を巡る議論は、6月26日の加藤厚労相からの中央最賃審への「最賃額改定の目安」の諮問でスタートした。

目安の審議は例年通り、同審議会の小委員会に場を移して実施。通常は4回の委員会開催で結着(労使の意見を踏まえて公益委員が取りまとめ)していたが、今回は7月21日夕に5回目の委員会が開催。夜を徹しての審議が行われたが結論に至らずに一旦休会。翌22日の午後に再開したが、労使の溝は深く、公益委による「目安」の取りまとめには至らなかった。

20年度の最賃は今後、都道府県労働局が開催する「地方最低賃金審議会」での審議を経て確定、10月初旬にも発効する。

中央最賃審から加藤厚労相に提出された答申には、「賃金引き上げが可能な企業は前向きに取り組む」などの公益委員の見解を地方最賃審に提示することが明記された。地方最賃審には公益委見解を十分参酌し、自主性を発揮することを求めた。

中央最賃審が最賃額の改定の目安を示さなかったのは、2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに生じた金融危機(リーマンショック)に端を発した世界同時不況が、わが国の電機や自動車など輸出企業の業績を直撃した2009年度以来11年ぶり。

  

静岡県 今秋にも「自家警備」2020.08.01

月内に対策協議会設立へ

静岡県(川勝平太知事)は、今秋にも県発注の建設工事で建設会社従業員による交通誘導「自家警備」をスタートさせる。月内に県(交通基盤部)、県警(生活安全部)、県建設業協会、県警備業協会、国(関東地方整備局)などから構成する「交通誘導員対策協議会」を設置、自家警備の「実施要領」策定に着手する。

実施要領では、警備会社の交通誘導警備員ひっ迫状況など自家警備を行う場合の基準や、工事現場周辺の交通量が少なく安全確保に支障がない場所――など実施のための細部を詰める。

交通誘導警備員に代わり、交通誘導を行う建設会社従業員への教育(講習)は、静岡警協が行うことが既に決定。講習時間は、自家警備を例外的に認めている長崎県や広島県などを参考に、3〜6時間程度の講習となる模様で、受講者には修了証を交付、一定の有効期限を設定し、期限ごとの更新を求める予定。早ければ10、11月にも県内複数箇所で講習会がスタートする見込みだ。県建設業協会担当者によれば、既に加盟社470社から480人が講習受講を希望しているという。

県や建設業協会によれば、県内では数年前から交通誘導警備員不足が深刻化。特に公共工事の工期末を迎える年度末には、工事に支障が出るほどだったという。今年は、「東京2020」のために例年以上に警備員不足が深刻になると予想され、特に県は早急な警備員不足への対応を模索していた。

建設業の9割 自家警備肯定

静岡県建設業協会(会長=石井源一・石井組会長)は6月25日、交通誘導員の円滑な確保へ向け、(1)必要な経費の確保(2)指定路線の緩和(3)自家警備の導入――などを内容とする要望書を県や県警本部に提出した。その際、4月に加盟社に実施した、交通誘導警備員不足が工事に与えた影響を調査したアンケート結果も提出した。

同アンケート結果によれば、全体の1〜2割の企業が交通誘導警備員不足を理由に入札参加の断念や工期延長を行っていた。また、8割の企業が県外など遠方から交通誘導警備員を手配せざるを得なかったことから「(事前に積算していた)設計単価と実勢労務単価が乖離した現場があった」と回答。これら現場でも100パーセント近くがやむを得ず契約していた。

また、検定合格警備員の「交通誘導警備員A」の確保が特に困難とし、検定合格警備員の配置が義務付けられている指定路線の“緩和”を9割が求めていた。自家警備については、「全面的に導入」と「安全性を考慮して区間を限定して導入」を合わせると9割が自家警備を肯定していた。

特集ワイド2020.8.01

「コロナ」意識調査

セコム(東京都渋谷区、尾関一郎社長)は、全国の20歳以上の男女227人を対象に「新型コロナウイルス感染症に関する意識調査」を行った。その結果、9割近くが自身の感染に「不安を感じている」と回答した。周囲の人に感染させてしまうことへの不安も6割にのぼった。対策は「マスク着用」「3密回避」が大半を占めた。警備業は感染防止に向けた業務サービスの提供が求められている。

同調査は、セコムが全国の男女500人(20代〜50代、60歳以上の各50人)を対象に6月23日〜24日に実施した9回目の「日本人の不安に関する意識調査」で、新型コロナ感染症の拡大に不安を感じていると回答した人を対象として同日に行った。

社会生活で喫緊の重要課題となったコロナに関する不安、対策の実態について明らかにすることが調査の目的だ。

日本人の不安に関する調査では、9年連続で7割以上の人が「最近不安を感じている」と答え、最も不安を感じる項目の1位となったのが「感染症の拡大(28.3パーセント)」だ。昨年まで8年連続で1位だった「老後の生活や年金(22.8パーセント)」は2位、3位は「健康(17.1パーセント)」、4位は「地震(10.1パーセント)」だ。

コロナに関して具体的に不安を感じる項目の1位は、「自分がコロナに感染すること(86.3パーセント)」、2位は「周囲の人にコロナを感染させてしまうこと(59.9パーセント)」、3位は「医療機関の逼迫」(41.4パーセント)だった。

コロナは感染者が無症状のまま感染を広げてしまう可能性があり、施設や店舗などでのクラスター(集団感染)発生などから、職場や公共の場で周囲に感染させてしまうことに対する不安感の強さがうかがえる。

医療機関の逼迫については、米国ニューヨークでコロナによる死者は累計で3万人を上回り医療崩壊の危機が報じられたことや、国内においても医師や看護師が使用する医療用マスク、防護服が深刻な供給不足に陥ったことなどがあり、不安感を押し上げたとみられる。

4位以降は「外食や旅行、娯楽などの制限によるストレス(37パーセント)」、「自宅待機や休業等による収入の減少(36.1パーセント)」、「運動不足による健康状態の悪化(33.9パーセント)」、「業績悪化による事業継続・雇用の不安(28.2パーセント)」と続いた。緊急事態宣言を受けて店舗などの営業自粛、外出の自粛が続いたことで、収入面や精神面の不安につながったことが明らかになった。

不安を解消するために何か対策をしているかとの問いには、「対策をしている」と回答した人が70.5パーセントにのぼった。その中で、不安を解消するための具体的な対策の項目は、1位が「手洗いの徹底、マスクの着用、消毒液の使用(96.9パーセント)」、2位は「3密(密閉、密集、密接)の回避(88.1パーセント)」。日常生活を送る中で基本的な感染予防対策を積み重ねていること、“密”を避ける意識が高まっていることが分かる。

3位は「計画的な買い物による外出機会の低減(59.4パーセント)」、4位は「通販や宅配サービスの利用(30.6パーセント)」、5位は「ウェブ会議などオンラインツールによるコミュニケーションの活用(24.4パーセント)」と続いた。政府の専門家会議が提唱するコロナ対策を取り入れた「新しい生活様式」が広まっている傾向が見てとれる。

景気悪化懸念、雇用に不安も

今後どのようなことに不安を感じるかの問いには、「自分が新型コロナに感染することが(83.7パーセント)」が1位で、2位は「感染拡大の第2波の到来(71.8パーセント)」だった。緊急事態宣言が解除された後も、コロナに対し根強い不安が続いて警戒を緩めることができない状況がうかがえる。

「国内景気の悪化」、「業績悪化による事業継続・雇用の不安」、「世界情勢の悪化(政治的緊張・経済停滞)」に対する不安は、約4割にのぼった。国内外の経済の動向に加えて、国際的な問題にコロナ禍が及ぼす影響が懸念されていることが明らかになった。