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クローズUP

埼玉警協雇用促進対策分科会2019.03.01

労働局で意見交換

埼玉県警備業協会・オリンピック等警備諸課題対策推進特別委員会の「雇用促進対策分科会」は2月22日、さいたま市内の埼玉労働局とハローワーク大宮を訪問した。訪れたのは分科会座長の牧野考二郎氏(ALSOK埼玉)、委員の大山恭子氏(結)と井出雅博氏(ケイビー・コム)、協会事務局長の貫田晋次郎氏の4人。

労働局では大塚陽太郎職業安定部長や倉林正彰職業安定課長などと高齢者雇用の現状や今後の施策などについて意見を交わした。また、埼玉警協が作成した「求人募集ポスター」の県内ハローワークへの掲示を要請した。

ハローワークでは小久保勉所長や職業紹介窓口担当者などと面談。求職者の警備業に対する反応、多くの求職者を警備業に呼び込むための方策などについてアドバイスを受けた。また、複数のハローワークによる大規模な「就職説明会」の開催などを提案した。

特集ワイド 警備業は「請負業」2019.03.01

寄稿 元神奈川警協専務理事・早川正行氏

警備業は今、「適正取引の推進」に向けた取り組みを進めている。これまで警備業者は、発注元が強い立場にあることから以後の取引を断られることを恐れ、料金交渉をうまくできないケースが多かった。元神奈川県警備業協会専務理事で本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏は本紙に寄稿し、「警備業は請負業としての自覚を持ち、不適正な商慣行に終止符を打つことが重要」と指摘した。

全国警備業協会は「警備業における適正取引の推進」と題するリーフレットを作成し、加盟各社に対して不当取引との決別に向けた啓発活動を展開している。

このリーフレットに取り上げられた7項目の事例は、まさに業界に蔓延する不当な商慣行であり、立場の弱い警備会社が発注元に泣かされ続けてきた事例そのものである。業界を挙げて適正取引に向けた動きを開始したことは画期的であり、今後の成果を期待したい。

しかし7つの事例をよく見ると、製造業などに見られるいわゆる“下請けいじめ”に苦しむ下請け会社の悲哀が共通してあることに気付かされる。警備業は請負業であるにもかかわらず、その実態はいつの間にか発注元に対する下請業の構図に取り込まれ、下請けいじめの被害に遭っていたのである。

もちろん請負業とはいえ「下請け法」の保護の対象であることに変わりはないが、発注元の指示の中で業務を提供する下請けとは責任の度合いに大きな違いがある。

警備業は、発注元から「安全・安心」というサービス業務を請け負い、仕事の段取りや警備員の配置、資機材の準備など警備計画を作成し、警備会社の責任において請け負った業務を完遂する。発注元とは事前の協議で警備業務の内容・期間を確定する以外は、指示・命令の関係はない。そこに下請けとの大きな違いがある。

しかも警備業は「警備業法」という厳しい制約のもとで請け負った業務を遂行しなければならない。警備業界は今まで、こうした特性を発注元に理解させる努力が足りなかったのではないだろうか。

例えば下請法の書面交付義務違反は、発注元に対し50万円以下の罰金であるのに対し、警備業法は100万円以下の罰金に処せられる。刑罰だけを見ても、発注元より重いのである。さらに警備業法違反の罰金は、警備業者としての適格性を欠き「認定取り消し」という最も重い行政処分につながる。

このように警備業法は、厳しい行政処分を担保に、法の順守を要請している。警備業法により形づくられた警備業の特性を説明してこなかった業界側にも反省の余地がある。適正取引に向けて、警備業は請負業であることの自覚とプライドを持つべきだろう。

警察庁と労働省の覚書

警備業法の条文を見ても「請負業」という表現はない。それでは何を根拠に警備業は請負業として発展してきたのか。

それを示すのは、警備業法案を国会に提出するにあたり、1972(昭和47)年3月15日付の警察庁と労働省(当時)が交わした「覚書」だ。覚書の内容は「警備業に関し、職業安定法が禁止する労働者供給事業とならないよう警備業者を指導するとともに、同法に違反する事実が認められたときは、速やかに、営業停止等の処分その他必要な措置を講ずる」としている。

この覚書は、警察庁が新法として警備業法案を作成していることを踏まえ、労働省としても警備業務において労働者供給事業への懸念があり、また、同省審議会委員の意見も踏まえて、警察庁と労働省の間で締結されたものである。

警備業法案を審議する国会の委員会では「覚書」についても審議が行われた。労働省の説明員は「もし警備業が労働者供給事業を行った場合は、労働省としてもこれをやめさせる。そういう事実があれば、公安委員会に通報して営業停止など必要な処分をしていただく。そういうことを覚書の形で明らかにしたものです」と説明した。

そもそも警備業法は、警備会社に雇われたガードマンが用心棒として労働争議に不当に介入し、国民の批判を受けるなどの反省を踏まえて法律の制定に至ったもので、法律の根底において、いわゆる“人入れ稼業”とならないように、労働者供給事業とは一線を画すことが強調された。

興味深いのは、国会の質疑の中で「人入れ稼業」という表現を用いて質疑が行われていることである。覚書が重視する労働者派遣業務の禁止は、具体的には、警備業法第3条第3号により、「他の法令に違反する重大な不正行為」として規定し、第8条により「認定取り消し」という最も重い行政処分を課すこととしている。

さらに警備業法第21条は「警備業者の責務」として、警備員に対する指導・監督の義務を規定し、労働者供給事業とならないように縛りを強化している。

営業マン教育が必要

発注元に対し、警備業務が警備業法により形作られていることを説明できるのは営業マンである。営業マンには、業務の受注交渉に際し、警備業務の特性を説明できるだけの知識が求められる。警備業法は、警備業務の適正を図ることを目的としているため、当然ながら営業マンについての講習は規定していない。今、業界を挙げて取り組みを開始した「警備業の適正取引」を推進していくためには、各警備会社が警備業務の特性を説明できる営業マン教育に取り組む必要がある。

警備員の採用に際しては不適格者の排除、採用した警備員の新任・現任教育、検定合格警備員の配置、契約時の書面交付など、厳しい制約の中で請け負った警備業務を提供するのである。警備会社はこうした規制の中でサービスを形作り、商品として提供する。

長い間、警備業務の特性を説明するなど発注元の理解を得てこなかったために、不適正な商慣行が続いてきたといっても過言ではない。営業マンを理論武装させ、不適正な商慣行に終止符を打ちたいものである。