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「子供の車内放置やめて」2024.09.01

岡山警協「ももたろう青年部会」啓発活動

車内に放置された乳幼児を発見したら消防、警察に通報して――。岡山県警備業協会「ももたろう青年部会」(小川昌之部会長=近畿警備保障)は8月7日、岡山市内の商業施設で行われた県警察主催の啓発活動に参加した。

小川部会長はじめ青年部会員5人は、協会事務局、県警人身安全対策課、児童相談所などの参加者とともに「乳幼児の車内放置は児童虐待、絶対やめて! 発見したら通報して下さい」と記したポケットティッシュとうちわ100セットを買い物客に手渡して訴えた。

部会員は駐車場内を巡回し車内放置がないことを確認。活動の様子は、NHKニュースで放映された。

小川部会長は「啓発活動は積み重ねが大切と考えます。警察と連携する警備業の存在アピールにもつながれば」と話している。

特集ワイド 警備業のM&A2024.09.01

経営者、従業員にメリット

警備業は人手不足や高齢化、後継者不在など課題が山積している。それらの解決策の一つにM&A(企業の合弁と買収)がある。M&Aは売り手側の経営者にとって不安や懸念が先行しがちだが、実は経営者と従業員の双方にメリットがある。業界唯一の警備業に特化したM&A仲介会社SECURITY BRIDGE(セキュリティブリッジ)の榎本泰基代表取締役に話を聞いた。

業界最大の課題として、深刻さを増している「人手不足」。各警備会社には人材の獲得につなげるため、賃上げや処遇改善の実現が必須だ。発注先と積極的な価格交渉を行い、適正な警備料金を確保して原資とする取り組みが進められている。

M&Aとは二つ以上の企業が一つになったり(合併)、企業が他の企業を買う(買収)ことだ。中小規模の警備会社の中には、後継者不在や経営難に陥ってM&Aを検討するケースがある。また大手の採用力に対抗することが難しいため、M&Aによって大手の傘下に入ることで自社の資本力やブランド力を高め、事業を成長させるケースも増えてきた。売り手側の会社にとって、M&Aにはさまざまなメリットがある。

例えば、大手の傘下や優良企業と一緒になることで給与や福利厚生など従業員の処遇が改善、買い手会社の理解を得られればM&A後も(売り手会社の)社長を続けることも可能で、現在の取引先との関係も継続できる。

連帯保証は事業を廃業した場合、全額を返済することが求められる。親族内承継では親族が、従業員承継では従業員がそれぞれ引き継ぐことになる。M&Aの場合、連帯保証は買い手会社に引き継がれる。

経済的な負担もM&Aは低額で済む。例えば親族や従業員が会社を継承する場合、同社の株式取得のために多額の買い取り資金が必要となる。経営者が親族などに無償で株式を贈与する場合でも、多額の贈与税が後継者に課せられる。M&Aなら株式譲渡の課税負担が少なく済むなどメリットは多い。

一方で、経営者の中には、M&Aに関心があっても「従業員の雇用を守れないのでは」「社名が変わってしまう」などの心配が先に立ち、踏み切れないこともある。これまで警備業で多くのマッチングを成功させてきたM&A仲介会社・SECURITY BRIDGEの榎本氏は「警備業のM&Aで最も重要なことは『適正な条件で警備員の方々を大事にしてくれる最適な相手とマッチングできるか』に尽きます」と強調する。

M&A仲介会社の中には、売り手企業に対してしつこい営業をかけたり、「御社を買いたいという大手企業があります」と嘘をついて関心を引こうとするケースもみられ、不信感を生む要因になっている。

一般的にM&A仲介会社のアプローチは、売り手会社に「御社を買いたいと言っている会社があります。面談させてください」と連絡を入れるケースが多い。SECURITY BRIDGEの場合は逆で、まず売り手会社が「M&Aを通じて何を求めているのか」という目的や価値観を重要視し、しっかりヒアリングを行った後、それに合った買い手会社を紹介する。

同社のM&A仲介業務の大まかな流れはこうだ。

▽アドバイザーが売り手会社の経営者と個別相談(無料)を行い、M&Aに関する疑問や懸念を解消する。

▽売り手企業のニーズや企業についてアドバイザーが深く理解するためヒアリングを行い、最適な解決策を提案する。

▽正式に契約を締結しM&Aに向けた支援を開始。売り手会社の魅力を最大限に伝えるための企業概要書を作成。

▽売り手側・買い手側の経営者が顔を合わせ、互いの会社への理解を深める。

▽両社の意思が固まったら基本合意契約を締結し、買い手候補1社に独占交渉権を付与。

▽売り手会社の財務、法務、事業等の全面的な調査を行う。

▽全ての条件に合意した上で譲渡契約書を締結し、決済を完了。決済終了後、SECURITY BRIDGEに成功報酬を支払う――と進めていく。

同社の場合、M&A検討の敷居を下げるため着手金と中間金は完全無料で、M&Aが成功して初めて報酬額が発生する料金体系を設けている。

同社のM&Aの報酬額は譲渡対価(資産の譲渡の対価として受け取った収入の総額)を基準とし、譲渡対価が3億円以下の場合は手数料1500万円。これは大手M&A仲介会社より500万円〜1000万円ほど低い金額となっている。

榎本氏は大手M&A仲介会社で警備業専門に担当した後、今年4月に警備業に向けたM&A仲介会社を創業。これまでに警備会社約300社の経営者と会って知見を深め、30人〜400人と幅広い規模の警備会社を支援している。

▽問い合わせ先 SECURITY BRIDGE ☎03―4400―4197 Eメールcontact@securitybridge.co.jp

成約事例 2つのケース

A社は100人規模で2号警備を主業務とする会社で、創業社長は60代前半。後継者がいないため、いずれはM&Aの必要があると考えていた。はじめは「買い手側」でM&Aを検討していたが、高利益を出している状況だったため高く評価してもらえると判断し「売り手側」の立場も検討するようになった。

A社の営業エリアに進出を計画していた5000人規模の大手警備会社と、M&A仲介会社によるマッチングが実現した。A社は業績が堅調で収益性も高かったため企業価値が高く評価され、希望条件に沿ったM&Aとなった。A社の資料提出がスムーズだったこともあり3か月以内で成約に至った。

A社社長は一定期間の引き継ぎ業務を行ったあと夢だった海外移住を果たし、今は悠々自適に余生を楽しんでいる。

B社は2号警備がメインの従業員30人未満の会社。創業社長は40代前半で警備員数を増やすことができず、3期連続で赤字となっていた。社長には小学生2人の子供がいて、家庭のことも考えてM&Aを決断した。

B社は資金繰りが苦しい状況だったため、M&A仲介会社では早急に買い手候補への提案を準備。その結果、M&Aの検討を始めて約2か月で、従業員数200人規模の会社とマッチング、成約することができた。

B社社長は買い手会社の支援を受けながら、引き続き売り手会社代表取締役として勤務している。M&A前は業績が苦しいため役員報酬をほとんどとれない状況だったが、M&A後は買い手会社の部長も兼務することで、年収が1.5倍に増加。

B社社長は「管理部門をグループ会社に外注することで、採用に力を入れることができ収入も増えた。こうした環境を用意してくれた買い手会社に対し、グループ拡大に貢献することで恩返しをしたい」と話している。