クローズUP
3府県(京都、大阪、兵庫)青年部2024.08.01
神戸市内で合同勉強会
兵庫県警備業協会、京都府警備業協会、大阪府警備業協会の青年部会員による「三府県合同勉強会in HYOGO」が7月12日に神戸市内で開催された。80人が参加し、教育をテーマとする講演と参加者の討論が行われた。
第1部は全国警備業協会・研修センター研修企画第一課課長の板垣将司氏が「全警協職員が考える教育マネジメント」と題し講演。特別講習などで“感動を与える講義”は、受講者の向上心を高め継続的な成長の源になると、自身の体験を振り返って述べた。教育指導のポイントとして「教える時は、情報過多にならないよう“言葉の引き算”をすると伝わりやすい」「教える相手に関心・愛情を持って個性を見極めて指導すると効果的」と強調。質の高い均一な教育を安価で受講できる全警協eラーニングのメリットを解説した。
第2部は、開催県の兵庫・熊谷匠馬部会長(東洋ワークセキュリティ)、京都・安東純吉部会長(新京都パトロール)、大阪・阪本健太郎部会長(フォールズ)はじめ参加者が3テーマで活発に討論を行い、次のような意見があった(要旨)。
<協会加盟会社の増加策> 加盟するメリットとして“法改正など最新情報の共有や人間関係の構築につながる”と周知を図る。ユーザー関係者との交流会などもあると良い。
<あなたの思う理想の警備員とは> プロ意識が高く、顧客の目線で理想となるような警備員。育成するため教育の充実とともに企業による健康面のバックアップも大切。健康診断のオプション追加、スポーツジムの法人契約、メンタルケアなどの健康増進は定着促進につながる。
<教育で警備料金に上乗せできる付加価値> 資格取得によるスキル向上、マナー研修、外国人が多く訪れる警備現場では語学研修など、業務に役立つ専門知識を付与する取り組みは顧客へのアピールになる。
特集ワイド カスハラから守る2024.08.01
国、自治体 対策強化へ
顧客などからの著しい迷惑行為を意味する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が広く知られるようになった。国はカスハラについて「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当で就業環境が害される行為」との判断基準を示しており、警備業を含めた幅広い業種で被害事例がある。働く人や事業活動をカスハラから守るため、国や自治体は対策強化に動いている。
研修動画
厚生労働省は昨年度、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の一環として、企業向けの研修動画を制作した。約34分の動画はカスハラの実態、影響や該当行為、企業が具体的に取り組むべき対策をまとめている。
該当行為では(1)時間拘束型(2)リピート型(3)暴言型(4)暴力型(5)威嚇・脅迫型(6)権威型(7)店舗外拘束型(8)SNS・インターネット上での誹謗中傷型(9)セクシャルハラスメント型――の9類型を示し、行為例や判断例をそれぞれ説明。
企業が取り組むべき具体的対策については、経営トップのメッセージを社内外に発信することやケーススタディの実施などを挙げ、チェックシートも紹介している。
研修動画は厚労省のホームページ内で公開。内容をまとめた資料はダウンロード可能だ。
法制化検討
カスハラについて厚労省は、労働施策総合推進法を改正し、パワーハラスメント(パワハラ)などと同様、企業に防止対策を義務付けることを検討。有識者の検討会が取りまとめを進めている報告書の素案に、法制化の方向性を盛り込んだ。
厚労省によると、接客頻度に比例してカスハラを経験する割合は高くなる。被害を受けた労働者は「怒りや不満、不安を感じた」「仕事に対する意欲が減退した」と調査に答えた。企業では、従業員数が少なくなるほどカスハラに対応していないことが多くなり、警備業で9割を占める「99人以下」は未対応が7割強にのぼる。
報告書の素案では、業界によって顧客対応の基準が異なることから、それぞれの業界での一体となった取り組みや所管官庁との連携がカスハラ防止に効果的とする。
一方、顧客から正当な指摘を受けた労働者の不適切な対応、企業の不手際がカスハラのきっかけになっている場合があるとして、対応力強化のための研修の必要性に触れている。
防止条例
東京都は、全国初となるカスハラ防止条例の制定を目指している。罰則を設けない理念型で、7月19日に、条例の「基本的な考え方」を示した。都は8月19日までのパブリックコメント(意見公募)を経て、都議会定例会(9月18日〜10月4日の予定)に条例案を提出する方針。
条例には「あらゆる場でカスハラを行ってはならない」とする禁止規定を設ける。働く人の心身の健康や就業環境を守るため、カスハラの防止を喫緊の課題と位置付けた上で、働く人や職場の努力だけで防げるものではないとして、社会全体への「カスハラ禁止」の浸透を図る。
一方で、正当なクレームは本来、業務改善やサービス向上につながるものであるとし、顧客の権利を不当に侵害しないよう留意することを明記する。
また、条例では「各主体」の責務を規定する。都の責務は顧客、就業者、事業者にカスハラ防止に関する情報提供や啓発・教育などを行うこと。顧客には就業者への言動に必要な注意を払うよう努めることを、就業者にはカスハラ防止に資する行動をとるよう努めることを課す。
事業者については、カスハラを受けた従業員の安全を確保するとともに、行為をした顧客に対して「中止の申し入れ」など適切な措置を講じることを努力義務とする。
都は、カスハラ被害が都内で深刻化しているとして、対策のための検討部会を昨年10月に設置。被害では、カスハラを受けた就業者が精神疾患になり、休職や退職に追い込まれたケースなどがある。小池百合子知事は2月の都議会で「東京ならではのルールづくりが求められている」と述べ、条例制定の方針を表明した。
検討部会は労使の代表や有識者が委員を務める。4月までに4回の会議が開かれ、委員からは「条例は当事者の主体的な取り組みの法的根拠になる」「都内中小企業の8割以上は従業員20人以下。中小でもできる対策を示してほしい」など、さまざまな意見が寄せられた。
5月に開かれた「公労使による『新しい東京』実現会議」では、部会の検討状況について報告を受け意見交換。「人手不足が深刻な中、カスハラで従業員が辞めるのは中小企業にとって死活問題。東京都の動きは、対策を本格化させる企業にとって強力なバックアップになる」「行動変容につながる施策を推進してほしい」との一方、「カスハラに該当する具体事例は『ここまでなら許される』といった誤ったメッセージになる可能性がある。事例の取り上げ方は慎重に」などの声が上がった。
都は、条例の実効性を高めるための指針(ガイドライン)の作成に向けて検討会議を設置、議論を始めた。
職員アンケート
千葉県が行った職員アンケートによると、回答者のうちの4割が県民などからカスハラを受けたことがあった。
アンケートは昨年12月から今年2月にかけて、知事部局の職員約1万人を対象に行い、3293人から回答を得た。
職場で過去3年間にカスハラを受けたことがあると答えた職員は1342人。行為は多い順に「長時間の拘束や同じ内容のクレーム」「名誉棄損・侮辱・ひどい暴言」「脅迫」だった。
どういうときに受けたかでは、電話応対時が最も多く、通常勤務している場所での応対時、外出先での応対時が続いた。
職員がカスハラに該当すると考える「拘束・クレーム時間」は30分以上が最多。次いで、1時間以上、15分以上だった。
県は「安易にカスハラと判断しないことに留意しつつ、社会通念上不相当とされる要求などに組織として毅然とした対応ができるよう、新たにマニュアルを作成する」としている。
接客マナーを研修
総合ビルメンテナンスの五十嵐商会(東京都練馬区)の五十嵐和代社長は6月、東京都警備業協会女性部会の研修会で「接客マナー」などをテーマに講演した。五十嵐社長は接客研修での豊富な講師経験がある。講演では、カスハラ対策にもつながるマナーの5原則(あいさつ、言葉づかい、身だしなみ、態度、表情)について説明した。
同社では施設警備の社員が、手続きで訪れた人から苦情を受けたことがある。社員の言葉づかいが原因で、利用者に不快感を与えてしまったという。「言い方ひとつで変わる。相手の気持ちを考えて対応することが大切」と五十嵐社長。社内で定期的に接客研修の場を設け、マナー向上を図っている。
駐車場警備では、駐車スペースをめぐってクレームを受けた際に謝罪要求がエスカレートしていった事例もあったという。都のカスハラ防止条例について五十嵐社長は「条例は必要だと思う。(クレームが)一定のところで止まって、それ以上発展しないために」と話す。