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セコム防災意識調査2024.09.11

「対策していない」6割

セコムは全国の男女500人(20歳〜69歳)を対象に「防災に関する意識調査」を行った。

国内の災害増加や被害拡大の可能性について「高くなる」「どちらかというと高くなる」と答えた合計は、全体の93.2%となった。一方で防災対策については57%が「していない」と回答した。

防災対策を「している」と答えた人の具体策は、「一定量の食料・生活用品の日常的な備蓄」53%、「防災リュックの用意」48.4%、「除菌ウェットティッシュ、マスクなど感染症対策グッズの用意」42.8%が上位を占めた(複数回答)。「災害用簡易トイレの用意」は39.1%だった。

能登半島地震の報道を受けての災害用簡易トイレが重要だという意識について「強くなった」と「やや強くなった」の合計は54%となった。しかし、91.8%が「使ったことはない」と回答した。

セコムIS研究所の濱田宏彰研究員は、災害を懸念する人が9割を超える一方、6割近くが対策していないことについて「『自分は大丈夫だろう』という心理状態になる“正常性バイアス”や、『他の皆もやっていないから大丈夫だろう』という“同調性バイアス”の心理が働いていると考えられる。災害への備えは、いかに“自分ごと化”できるかが重要」と指摘。「災害発生時は身の安全確保が最優先。転倒防止グッズは量販店などで手軽に購入できるので、ぜひ対策してほしい」と述べた。

25年度予算概算要求2024.09.11

防災事業相次ぐ

2025年度予算の各府省庁の概算要求が8月30日に締め切られ、一般会計の総額は過去最大の117兆円を超えた。能登半島地震や東日本大震災の復旧・復興関連、激甚化する風水害や南海トラフ地震など大規模災害への備えに関する事業への要求が相次いだ。

国土交通省は7兆330億円を要求。「災害復旧等」として580億円を一般公共事業関係費の6兆2899億円に盛り込んだ。「防災・減災、国土強靭化のための5か年対策」などの総額は予算編成過程で検討する。

「南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策」として2771億円、「地震、豪雨、豪雪など災害時における物流・人流の確保」には4939億円を要求。激甚化する災害に対する防災・減災、予防保全に向けた老朽化対策には1兆405億円を要求し自治体の取り組みを支援する。

警察庁の要求・要望額は3284億円で「大規模災害等の緊急事態への対処」として79億円を要求した。

総務省は18兆8327億円を要求。「緊急消防援助隊の充実強化」に56億円など、消防防災力・地域防災力の強化として105億円を要求した。

経済産業省は4415億円、うち中小企業関連で1300億円を要求した。このうち福島復興関連で629億円、中小企業・小規模事業者の防災力や事業継続力の強化、BCP(事業継続計画)策定の促進などに227億円を要求している。

セノン新社長に澤本氏2024.09.11

稲葉氏は会長に専念

セノン(東京都新宿区)の代表取締役社長執行役員にセコム執行役員の澤本泉氏が8月26日付で就任した。代表取締役会長兼社長の稲葉誠氏(セコム取締役)は取締役会長に専念する。

澤本氏は、2022年よりセコム執行役員を務めている。

澤本泉(さわもと・いずみ)氏 60歳。1992年2月、セコム入社。92年8月、セコムシステムズ出向。2006年10月、セコムSI営業一部長。15年6月、SI営業本部長。16年10月、法人営業本部副本部長。18年6月、TSS事業推進本部副本部長。20年10月、営業第三本部長。22年4月、同社執行役員営業第三本部長。

特集ワイド 「ジギョケイ」って何!?2024.09.11

事業継続へリスクに備える

企業が災害などに見舞われた際、速やかに業務を再開するための備えとなる事業継続計画(BCP)。策定を行政が支援しているが、中小企業にとってはハードルは高いのが実情だ。そこで中小企業基盤整備機構(中小機構)災害対策支援部・長谷川貴則部長に中小警備会社にも取り組みやすい「事業継続力強化計画(ジギョケイ)の概要と活用法」について寄稿してもらった。

元日に発生した能登半島地震が記憶に新しいが、近年大規模な災害が全国各地で発生し、地域の中小企業やサプライチェーンに多大な影響を与えている。中小企業もこうした激甚化する自然災害による被害を最小限に抑え、事業を継続していくための備えが必要である。しかし、BCP(事業継続計画)の策定には相応のノウハウや人員を必要とするため、警備会社を含む中小企業にはあまり普及してこなかった。

このような背景から2019年7月に「事業継続力強化計画」(以下、ジギョケイ)の認定制度がスタートした。ジギョケイは各種の災害に向けて準備する防災・減災に焦点を当てた簡易な方法で、中小企業にも取り組みやすく、実践的で効果的な計画を策定できる。また、経済産業大臣の認定を受けることで、低利融資等の金融支援、防災・減災設備に対する税制措置、補助金の加点措置等の支援策が活用可能になる。

中小機構では、ジギョケイの普及促進のため、セミナーの開催や専門家による個別支援等を行っている。ぜひ各種支援メニューをご利用いただきたい(「中小企業強靭化ポータル」を参照)。

ジギョケイには「単独型」と「連携型」の2種類があり、現在合わせて、6万9996件の計画が認定を受けている(2024年7月末時点)。単独型は自社だけで策定する計画であり、連携型は複数の企業や組合などが連携し策定する計画だ。災害が発生した時には、やむなく自社や取引先が操縦を停止するなど、事業の継続が難しくなる。事業継続力をより強化するためには他社との連携も方法の一つであり、中小機構は特に連携型の策定支援に力を入れている。連携のタイプは大きく分けて「組合等を通じた水平的な連携」「サプライチェーンにおける垂直的な連携」「地域における面的な連携」という3つの類型がある。警備業を取り巻く企業、業界団体についてはそのいずれの類型についても計画策定に取り入れることが可能であると考えられる。

例えば、同じ事業を行う者同士の水平的な連携は、地域が異なる場合には被災リスクも異なるので、連携する企業間での役割分担や、被災時の代替生産などが期待できる。一方で連携先が同じ地域内にあれば、等しい災害リスクを抱える者として、事前の備えの検討や、訓練や社員教育などでも協力し合える。そして社会の安全を守るという使命を持つ警備会社として、顧客企業とともにジギョケイを策定すれば、お互いの災害への備えを強固にするだけではなく、社会的な信頼関係も増すという効果もある。これまでの事例を見ると、地域内における連携は、企業にとって大切な社員とその家族、顧客も地域内の住民であることが多く、地域社会への貢献という点で、重要な役割を担っているようだ。

ジギョケイ策定に関して注意すべきは、ジギョケイの目的はあくまでも事業継続を脅かすリスクに備えるということだ。計画を作っただけでは効果はなく、日頃の社を挙げた訓練や情報交換が重要となる。下図のとおり、ジギョケイ策定後における訓練を実施した企業と未実施の企業を比較すると、操業度の早期復旧、売上被害軽減ともに効果に差がみてとれる。

また、社会変化に伴ってリスクは変化するため、計画は定期的に見直す必要がある。ジギョケイは、その策定にあたり、平時の訓練や、定期的な計画内容の見直しを求めている。ジギョケイにより、経営の改善も期待できる。策定のプロセスにおいて、発災時に優先すべき経営資源の確認を求めている。それによって、自社の魅力や社会的な役割を再確認できるはずだ。また、従業員個々のレベルで考えると、優先すべき経営資源を使った業務の見える化や、関わる従業員の多能工化は、業務の繁閑調整にもつながり、訓練や教育を通じて社内の活性化も期待される。

さらに、ジギョケイの策定を社外に知らせることによって、自社の従業員と顧客を大切にする姿勢を示すことになり、今後の採用や従業員の定着にもつながる効果があるものと考えられる。

YS警備

静岡県菊川市を中心に県内5か所に拠点を置くYS警備(長谷保良代表取締役)は、2021年に単独型のジギョケイを策定し、認定取得した。警備業と霊柩搬送業を手掛ける同社は、交通誘導警備、駐車場警備のほか施設警備などに約30人の警備員が従事している。

遺体を運ぶ霊柩搬送を行っていることから斎場の駐車場警備も多い。ジギョケイ策定にあたっては、従業員の安全を最優先に確保しつつ、高齢者が多く集まる斎場で施設関係者と連携しながら参列者の安全を確保することに留意した。施設の災害対応マニュアルとの整合性を図りながら策定した。

長谷すず子専務は「ジギョケイ策定を機に自治体の防災対策への理解が進んだ。社内でだいたい四半期毎に班単位の会議を行い、ジギョケイを確認しながら自治体と連携して自社では何ができるのかなどを協議している」と日常の業務や経営にも活用している。

太陽警備保障

交通誘導警備を主体に山形県内に4営業所を置き、100人弱の警備員が勤める太陽警備保障(山形市、神﨑祐子代表取締役)のジギョケイは今年5月に認定を取得した。「地震」「感染症」「サイバー攻撃」を想定される危機とし、冨田俊実取締役社長を中心に策定した。

計画の実効性を高めるため、新任・現任教育でジギョケイについて学ぶ時間を設け、警備員の有事の対応力を高めている。同社は通信手段が途絶した場合でも、従業員の安否が確認できる連絡体制も構築している。

感染症対策では、コロナ禍の際の対応状況を記録し、誰が担当しても対応できるよう共有する。サイバー攻撃対策では、社内情報システムの構築等をサポートしている業者と連携し、勉強会を開催。内勤者15人が安全なメール送受信などを学んだ。

同社は山形・秋田両県に被害をもたらした7月の大雨後もいち早く事業を再開し、復旧工事に交通誘導警備員を派遣した。