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「熱中症から警備員守る」2025.01.01

厚労省 建設現場の対策強化へ

厚生労働省は警備員や建設作業員など主に建設現場で発生する熱中症を念頭に、予防対策強化の検討に着手した。同省は今春にも対策を取りまとめ、5月から実施している熱中症予防のための「クールワークキャンペーン」にも反映させるなど熱中症リスクに備える。

厚労省によれば、熱中症は死亡に至る割合が他の労働災害の5〜6倍、死亡者の約7割が屋外での業務中に発生している。死亡要因の分析では、発症した人が重篤化した状態で発見される「発見の遅れ」、具合の悪くなった人が医療機関に搬送されなかった「異常時の対応不備」など「初期症状の放置・対応の遅れ」が指摘されている。

このため同省は、すでに熱中症予防や救命救急医療などを専門とする大学教授など学識者へのヒアリングを実施。警備業者や建設業団体などからも熱中症予防対策の実態や課題について聞き取りを行った。これら結果を受け、同省は特に死亡者の多くを占める建設業と警備業を念頭に「熱中症で警備員や建設作業員を重篤化させない、死亡させない」ことを重点に対策を強化する方針だ。

具体的には、建設現場で熱中症を発症した警備員などをいち早く発見できる体制の整備とともに、熱中症を発症した人に速やかに身体冷却や医療機関に搬送するなどの対応を事業者に求めるものとみられる。

熱中症予防対策の強化について同省は、審議会の中でも新たな対策を模索していることを明言。9月には立憲民主党が武見敬三厚労相(当時)に職場での熱中症対策の徹底を求める要請書を提出している。

<<解説>>2年連続、6人死亡

職場での熱中症による死亡者数は、2022年30人、23年31人と2年連続で30人を超えた。警備業も2年連続で6人死亡し、建設業(22年14人、23年12人)に続くワースト2となっている。

現行の労働安全衛生規則第617条は熱中症予防について「多量の発汗を伴う作業場では、労働者に与えるために塩・飲料水を備えなければならない」とのみ規定。91年厚労省策定の「熱中症予防基本対策要綱」や94年スタートの「クールワークキャンペーン」実施要項など通達の中で▽作業中の巡視▽労働者の健康状態の確認▽異常時の措置――などを示して指導している。新対策はこれら取り組みを強化するものだ。

「直行直帰」「単独または少人数配置」など小規模建設現場に従事する警備員にとって、新たな対策は建設業者による“配慮”も期待できる。自治体などの熱中症予防への理解が進めば、交代要員配置、そのための予算措置拡充などにもつながる可能性もある。