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クローズUP

「警備の日」全国大会開く2024.11.21

村井会長「価格転嫁で人材確保を」

全国警備業協会(村井豪会長)は11月11日、「警備の日」全国大会を都内で開催し、都道府県警協の会長や副会長、専務理事が出席した。「模範となる警備員」表彰式、防犯カメラと個人情報保護についての講演が行われた。

村井会長は、あいさつの中で「警備業界においては難しいと言われていた労務費の価格転嫁に一定の理解が示されるようになり、潮目は変化している。価格転嫁を処遇改善につなげて人材確保に注力する必要がある」と強調した。

その上で「現在、警備業界は転換点を迎えつつあると感じる。業界の存在意義に関わること、加盟員共通の利益に資することに取り組みを強化していきたい」と述べた。

警察庁・檜垣重臣生活安全局長は「警備業に対する社会的な需要や国民の期待は増大していると」と述べ、「警備の日」大会の表彰警備員を祝福した。

人命救助、初期消火、容疑者確保などの顕著な功労があった「模範となる警備員」として、全国72案件86人の中から選ばれた12案件15人に村井会長から表彰状が贈られた。

「広報プロジェクトチーム」の進捗報告が行われた。警備業の魅力を発信する「プロモーション動画」のデザイン案やキャッチコピー、公開スケジュールが説明された。

記念講演では、個人情報保護委員会事務局・参事官補佐の弁護士・小林貴樹氏が「カメラと個人情報保護」と題する講演を行った。犯罪予防に効果がある顔識別機能付きカメラシステムの利点や個人情報保護法上の留意点などを解説した。

齊藤幹生氏に旭日双光章2024.11.21

秋の叙勲 宮崎警協元会長

政府は11月3日付けで「2024年・秋の叙勲」の受章者を発表した。警備業からは宮崎綜合警備(宮崎市、齊藤総一郎社長)名誉顧問で、宮崎県警備業協会元会長の齊藤幹生氏(73)が、旭日双光章を受章した。警備業界の受章者は36人となった。

齊藤幹生(さいとう・みきお)氏は、1984年10月に宮崎綜合警備保障(現・宮崎綜合警備)に入社し、93年に代表取締役社長に就任した。2018年に取締役会長、20年に相談役、23年に名誉顧問に就任、現在に至る。

宮崎県警備業協会では、1990年に副会長、98年に会長となり、10期21年務めた。全国警備業協会は2012年に理事、16年に幹事になり2期4年務めた。

警協会長在職時には、2003年に県警本部生活安全部長と「身近な犯罪等の防止による安全で安心なまちづくりの推進に関する協定書」、08年に県知事と「廃棄物の不法投棄の情報提供に関する協定書」をそれぞれ締結した。10年に県内で口蹄疫が発生した際には加盟社警備員多数を消毒ポイントに配置、交通誘導警備業務に従事させ、被害拡大防止に貢献。11年に県知事と「口蹄疫等の防疫対策に関する協定書」を締結した。

主な受賞歴は、2009年全国警備業協会会長表彰(警備業功労)、同年宮崎県警察本部長表彰、11年警察庁長官・全国警備業協会会長連名表彰(警備業功労)などがある。

特集ワイド AI活用 施設警備2024.11.21

省人化実現、エラー防止

警備業の課題となっている人手不足を改善するため、業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化が重要になっている。アジラ(東京都町田市、尾上剛代表取締役CEO)が開発したAI警備システム「AI Security asilla(以下asilla)」が、施設警備に活用されている。システムの概要と警備会社が使用するメリットなどを紹介する。

「asilla」は独自の行動認識技術を使った施設警備システムだ。既存の監視カメラネットワークにAI機能を付加することで異常行動や不審行動を検知した際にリアルタイムで通知する。警備員の駆け付けなどの初動対応につなげる。映像をモニタリングする警備員の負荷を軽減し、24時間365日のモニタリングにより、見逃しなどのヒューマンエラーを防ぐ。

警備会社が「asilla」を導入するメリットとして、省人化による人手不足改善、効率化によるコスト軽減、警備の質向上がある。施設内の危険ポイントや施設利用者のニーズを新たに発見できることも挙げられる。警備や施設自体の課題が可視化されることで安全安心の向上に寄与する。

「asilla」の行動認識AIは現在、20の特許を取得している。人の手足の関節点を時系列で把握・分析することで行動を推定し、事故や犯罪を未然に防ぐ。

検知項目は、2022年のリリース当初は侵入や暴力、滞留などの「迷惑行為」、エスカレーター逆走や飛び降り自殺予兆、不審行動など「違和感行動」の検知がメインだった。現在はユーザーからのニーズに沿って、転倒やふらつきなど「ホスピタリティー」にも検知機能を拡張している。

アジラは現在、次の警備会社などと業務提携している(契約締結順)。

▽アールエスシー(東京都豊島区、金井宏夫社長)▽セノン(東京都新宿区、澤本泉社長)▽鈴与セキュリティサービス(静岡市、岩品浩司社長)▽東海警備保障(名古屋市、馬場善志雄社長)▽トスネット(仙台市、氏家仁社長)▽にしけい(福岡市、大坪潔晴社長)▽日本パトロール(仙台市、増子弘代表取締役)▽東洋テック(大阪市、池田博之社長)――など30社超に及ぶ。

導入施設は、新丸の内ビルディング(東京都千代田区)、サンシャインシティ(同豊島区)、東急歌舞伎町タワー(同新宿区)などの複合施設や、京浜急行電鉄、東急電鉄の駅構内など。その他、各地の空港や病院、オフィスビル、工場、学校などに広がっている。

AI警備システムの使用料金は、警備員一人あたりの人件費より安い価格設定となっている。人数カウントや混雑状況、車椅子や白杖、放置物などの検知はオプションで対応可能だ。人数カウントは精度90%以上を実現、監視カメラだけでカウント可能なためセンサーの設置が不要となる。システムの運用は、アジラのスタッフが現状のカメラシステムを確認後、サーバーを設置し、正常動作が確認でき次第、スタートできる。

AI警備システム「asilla」は、同社・神田オフィス(東京都千代田区)で実際にデモンストレーションを見ることができる。

鈴与セキュリティサービス

鈴与セキュリティサービス(静岡市、岩品浩司社長)は創業48年、施設警備をメイン業務とする400人規模の警備会社だ。これまで抱えていた課題は、働き方改革による労働時間制限、人手不足による採用困難と定着率低下、募集費の高騰、最低賃金の上昇などによるコスト負担だった。

こうした課題解決は先送りにするほど状況が悪化することが予想される。コストの上昇は警備料金に転嫁するなど早期に改善を図る必要がある。

同社三島支店が受注している県内商業施設の警備現場には、警備員12人が勤務していた。慢性的な人手不足で募集や教育に費用が掛かっていて、発注元に警備料金を上げてもらったが、それでも十分な利益を確保できない状況が続いていた。

そこで同社は次の3点を目標に対応することとした。(1)機械化やAIなど先進技術を活用し業務の効率化を図る(2)現場業務の見直しを図る(3)警備品質を更に向上させる。

そうした状況の中、三島支店の堤和之副支店長は、知人から「AIカメラで施設内で起こる暴力・転倒などのトラブルを検知して知らせてくれるシステムがある」ことを知った。トラブルにピンポイントで対処することで、省人化による業務見直しにつながると感じた。

AI警備システム「asilla」を導入し警備体制を見直したことで、業務は次のように変わった。

館内の監視カメラ78台を全てAIによる24時間監視体制とした。24時間4人の警備体制を止め、総労働時間1日58時間を51時間とした(7時間/日、213時間/月の削減)。警備員が担当していた受付業務を専任の女性に変えた。見直しを行った結果、現場の警備員数を5人削減し、同社が警備を担当している他の施設に異動。無理な配置が改善したことで、定着率も向上した。

堤副支店長は「AI警備システムの導入のほか、発注元と当社警備員の理解と協力、施設に何度も足を運んで調整したアジラのスタッフの方々のおかげです。当社が最も大切にしている『三方良しの精神』(近江商人による売り手良し・買い手良し・世間良しの経営哲学)につなげることができました」と語った。

イオンディライト

イオンディライト(東京都千代田区、濵田和成社長)はファシリティマネジメント(施設管理)事業を展開している。1972年から50年余にわたり、施設とその周辺環境の安全・安心を広く提供してきた。警備業務に関しては「人的警備と先端機器を組み合わせたオーダーメイドの警備」に取り組んでいる。

同社は既に、出入管理など複数の警備業務のシステム化を実現させてきた。しかし監視業務については、既設の監視カメラを使った機能・精度の向上を模索していた。膨大な監視カメラ映像の確認を目視ではなく先進技術で効率化するためだ。

そこで「asilla」の導入を検討することとなり、約1年半にわたる実証実験を経て10月から本格稼働させた。それからまもなく不審者が時間外に侵入する事案が発生し、「asilla」が検知して通報。警備員が駆け付けて被害を未然に防いだ。

商業施設内のエスカレーターで転倒事故が発生した場合、これまでは目撃した来店客が従業員に知らせ、従業員が防災センターに連絡して警備員が駆け付けていた。導入後は転倒をAIが検知して直接防災センターに通知され、警備関係者で情報を共有。現場近くにいる警備員が駆け付けるなど、迅速な対応が可能となった。

イオンディライト警備品質管理グループマネージャーの谷戸克匡氏は「アジラのスタッフの方には、設置時の調整をはじめ、きめ細かいサポートをいただいています。AIが業務を通じて学習することで、検知精度が一層向上しています」と話す。