クローズUP
関東地区連 「会長会」開く2024.12.01
課題を報告、討議
関東地区警備業協会連合会(岩野経人会長=神奈川警協会長)は11月19日、横浜市内で「会長会」を開いた。群馬を除く関東10県の警協会長と専務理事、全国警備業協会の村井豪会長と黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。全警協専務理事と総務部次長の講演を元に特定技能制度など外国人活用をはじめとする諸課題について意見を交わした。
全警協・村井会長は「価格転嫁による警備員の処遇改善で人材確保につなげる“好循環”をつくるなど、課題に正面から向き合っていく」と述べ、全国で最大規模の関東地区連の協力と取り組みに期待を寄せた。
同・黒木専務理事と小澤次長は、それぞれ講演した。
黒木氏は、全警協創立50周年記念として編さんした記念誌「警備業の歩み」に、自身が記した警備業の状況打開のための(1)好循環(2)国際的(3)DX(4)制度論的(5)戦略広報――の5つのアプローチの進捗状況について説明。小澤氏は、前記「国際的アプローチ」の一環として全警協が取り組む「特定技能制度への警備業導入」の下準備として今夏訪問したインドネシア視察の概要を報告した。
“フリートーキング”式での討議では、各県会長が課題などを報告した。
▽雨天中止となった花火大会について、自治体首長と大会実行委員会が「予備日の警備員不足のために中止」とコメントした。協会として抗議と要望を行ったところ、自治体からは「次年度以降、開催日、予備日3日、予備日の1週間後も警備を契約し、費用も用意する」との回答を得た。このような契約が一般的となると警備費用を工面できない自治体ではイベント自体が中止となる(茨城・鴨志田聡会長)。
▽建設業界が県発注工事の入札不調の理由として「警備員不足」を挙げたために、警備業協会も関与する形で自家警備を実施できる枠組みができた。実際には自家警備はほとんど行われておらず、他に原因があるのではないか。協会は警備員不足で困っている建設会社に警備会社をマッチングさせる制度を設けている(静岡・立川勝彦会長)。
▽協会非加盟の警備会社が自治体発注業務を(安価で)受注して不祥事や事故が発生した場合、契約先の自治体が指導するのは問題だ。協会が指導・監督する責任を負うことで、非加盟社の加盟促進、育成・支援につながる(栃木・青木靖典会長)。
▽外国人雇用の前に警備員の年収400万円を確保すれば、まだまだ人は集まるのではないか(山梨・幡野美好会長)。
▽県内でも外国人労働者への関心は高い。指導教育責任者が外国人に対していかに警備業を理解させるかがカギ(埼玉・炭谷勝会長)。
警備会社かたり「訪問させて」
岩野・地区連会長はあいさつで全国的に相次ぐ「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」や「アポ電強盗」に言及した。「これら犯罪は身近な場所でも発生している」と、最近自身が経験した「出来事」を明かした。
同会長によれば、自身の警備会社を名乗る人物から、ある住民宅に「電話にエラーが出ている。訪問させてください」との電話があったという。約5分後には「コールセンターです。すぐ訪問させてください」と、女性の声でしつこく訪問を求める電話があった。
住民は警備契約を結んでおらず、不審に思った家人は訪問を断り、岩野会長の会社に連絡して“事件”が発覚した。
岩野会長は所轄警察署の生活安全課に相談。自社と神奈川警協ホームページで注意喚起中だ。同会長は「警備業の間近でも事件は起きている」と、参加者に注意を促した。
特集ワイド 「安全と健康」守る2024.12.01
全国大会、広島で開催
今年で83回目となった「全国産業安全衛生大会」が11月13〜15日の3日間、広島市内で開かれた。中央労働災害防止協会(中災防)の主催で、総合集会や分科会(10カテゴリー、195プログラム)が行われ、働く人の安全と健康を守る機運を高めた。警備業では功績者として、2人が「緑十字賞」を受賞。警備会社2社が発表を行い、取り組みが広がっていくことに期待を込めた。
緑十字賞
大会初日の11月13日に開かれた総合集会では各種表彰を行い、大会宣言を採択した。産業安全や労働衛生の推進に功績のあった77人・3団体を表彰した「緑十字賞」では警備業から、長野県の今井仁志さん(信濃警備保障)と兵庫県の梶岡繁樹さん(コスモセキュリティー)が受賞した。
表彰式に出席した梶岡さんは、全国警備業協会の委員として20年近く、現場で働く警備員の処遇改善に努めている。人手不足が労災の原因にもなり得る中、人材確保に関係して、公共工事設計労務単価の上昇や社会保険加入率のアップに取り組み、成果をあげた。
長時間労働の是正も盛り込まれている全警協の「適正取引推進に向けた自主行動計画」の策定(2018年)と、19年から毎年行われている計画の改訂にも携わってきた。
梶岡さんは各都道府県警協のセミナーで講師を務め、全国各地を回っている。とりわけ今は、適正な警備料金の確保を目指して、料金算出方法の浸透などに取り組んでおり、「まだ道半ば。お世話になっている業界に恩返ししたい」と言葉に力を込める。
総合集会には全警協の労務委員会も参加した。佐々木誠委員長(セシム)は「安全への気持ちが引き締まる」と話した。
大会宣言(要旨)
労働災害は長期的に減少しており、昨年の全産業における死亡者数は過去最少となった。しかし、休業4日以上の死傷災害は第三次産業を中心に増加し続けており、昨年は約13万5000人にのぼっている。その社会的・経済的損失は膨大なものである。
人手不足が顕著になる中で、安心して働くことができる環境を整えていくことが求められている。転倒などの行動災害やメンタルヘルス不調の増加、働き方の多様化がもたらす影響を注視していく必要がある。
諸課題を克服していくためには、AIをはじめとするデジタル技術を産業現場に柔軟に取り入れ、複雑化する就労環境と価値観の多様化に対応することが必要となる。
本大会は、最新の情報を共有し、学び、交流する「知恵の貸し借り」の場である。労働災害による犠牲者をこれ以上出さないという決意を新たに、関係者が一丸となって取り組むことを誓う。
リライアンス・セキュリティー
リライアンス・セキュリティー(広島市、従業員約230人)の田中敏也社長が11月14日、「安全管理活動分科会」で特別報告を行った。同社の熱中症対策を紹介し、「毎年ブラッシュアップを重ね、できることは全てやっていく。『社員の健康と命を守る経営』に投資を惜しまない」と強調した。
同社では2007年、元自衛官で30代後半の警備員が熱中症で救急搬送された。幸い回復し職場復帰したが、「年齢、性別に関わらず、全ての社員に熱中症発症リスクがあることを強く意識するようになった」と田中社長。警備員任せのところがあったという熱中症対策を、会社を挙げて強化した。
具体的には、幹部社員が現場へ出向いている。水分や塩タブレットなどを配布するとともに、「体調」「睡眠時間」「朝食の有無」などを警備員から聞き取り、必要に応じて改善指導をしている。
記録的猛暑となった24年は7月6日から9月16日までの73日間で延べ85人の幹部社員が巡察を行い、延べ1048人の警備員と対面した。
また装備品の充実を図り、高通気性の制服、空調機付きのベスト、遮熱ヘルメットなどを順次導入した。
座学研修を含めた対策によって08年以降、熱中症による重傷者はゼロが続く。発症者数は、年間5〜7人だった強化前と比較し、3分の1に減少した。
田中社長は「熱中症対策の意識が浸透するまでに3年かかった」と振り返った上で、「地方の小さな会社でも、やれば成果が出た。ぜひ取り組んでいただきたい」と述べた。
「ゼロ災運動」「転倒防止」
中央労働災害防止協会の武井勝一さん(教育ゼロ災推進部次長)が11月14日、「ゼロ災運動分科会」で講演を行った。
ゼロ災運動は、労働安全衛生法が制定された翌年の1973年に中災防が提唱。昨年50周年を迎え、「全員参加」などを理念に掲げている。
武井さんは労働災害の芽を摘むためとして、管理活動と職場自主活動を両立させる必要性を強調。「やらされ感」があれば実効性がないとし、管理する側がねぎらいや励ましの言葉を掛ける大切さなどを語った。
ゼロ災運動について、健康づくりや働きがいの視点をプラスしたことを説明し、労災の多い第三次産業への運動の浸透を課題に挙げた。
厚生労働省の「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」の座長を務める高田礼子さん(聖マリアンナ医科大学予防医学教室主任教授)は同日、「メンタルヘルス・健康づくり・健康経営分科会」で講演した。
労災で高年齢の女性は転倒による骨折が多く、休業日数が1か月を超えることを説明。経済的損失を「見える化」し、企業が対策の優先順位を上げる必要性に言及した。
また、高年齢労働者の転倒労災には身体的要因(筋力・柔軟性・視認性などの低下)があるものの、個人差が大きいことを指摘した。一律の対策には難しさがあるとの見方を示し、リスクのセルフチェックが重要とした。
キステム
大会では計60のオンラインプログラムの配信も行われ、警備業からはキステム(東京都台東区、従業員約1400人)の髙木雄太さん(安全教育部担当課長)が発表した。
髙木さんは中災防の講座を受講。同社の主力業務が工事現場での交通誘導警備であることから、講座では建設コースを選択した。警備員の安全確保ではこれまで、教育や保護具の活用に取り組んできたが、講座を通じて「本質安全化」の考え方を知ったという。
本質安全化とは危険が潜む作業内容・方法自体を変えることだという。例えば工事現場での警備について髙木さんは、居眠りや酒酔い運転などにより車が突っ込んでくるリスクがある場所に警備員を立たせず、AIシステムを運用する必要があるとした。
「講座で得た知識を業務で応用したい。本質安全化の考え方を全国の警備会社に広げ、ゼロ災につなげたい」と話した。