クローズUP
AI交通誘導システム2025.03.11
静岡県内で初稼働
トーセイコーポレーション(静岡県沼津市、杉山喜乃代表取締役)は2月28日、静岡県函南町内の「第二丹那橋」工事現場の交通誘導警備で、AI交通誘導システムを導入した。県内で同システムの稼働は初めて。
橋梁の補修に伴う片側交互通行の規制で、AIカメラを活用して交通状況を検知、LED表示板の「GO」「STOP」などの文字や映像により車両を誘導した。
静岡県沼津土木事務所の職員が視察に訪れ、同社のAIオペレーターから説明を受けた。
同社は、2023年に沼津市内で全国交通誘導DX推進協会(秋山一也代表理事)と同システムの説明会を行うなどして、行政・警察と協議を重ね、今回の稼働に至った。
杉山代表は「システム導入により警備士の受傷事故を減らすことは、警備会社の重要な使命と考えています。少子高齢化で人材不足が加速する中、省人化を進め、より安全で付加価値の高いサービスを提供していきたい」と述べた。
工事を施工する池ノ沢工業(静岡市)・望月周専務取締役は「DXは、建設業と警備業に共通するテーマ。安全性の向上で現場の安心感はさらに高まると思います」と話していた。
「記憶を次代につなげる」2025.03.11
宮城警協専務理事が講話
宮城県警備業協会(氏家仁会長)は2月19日、「東日本大震災から14年――青年部への期待について」と題する特別講話を協会内で行った。
「震災後に警備員になった方も大勢いることから、記憶を風化させず次代につなげる」ことを目的に企画。3月11日の震災発生時、石巻警察署に勤務していた高橋直嗣協会専務理事が講師を務めた。青年部(早坂好行部長=ゴリラガードギャランティ)役員など12人が参加した。
講話の中で、震災直後に宮城警協は警察の要請を受けて被災地のパトロール活動に従事したこと、全警協災害支援隊が3月22日から支援活動に入り、大阪・神奈川・千葉・埼玉・愛知・東京・兵庫警協の各支援隊が5月27日まで被災地の安全・安心のために活動したことなどを振り返った。
警備員の活動がライフライン復旧や、その後の復興工事を支えたことを強調し、被災者から寄せられた次のような言葉を紹介した。
「不安だけが支配する中で、全国から駆け付けてくれた警備員のパトロールする姿に勇気をもらった」。
「津波被害により粉塵が舞う劣悪な環境で、工事車両や災害ごみ搬入車両を懸命に誘導している警備員の姿に感動しました」。
聴講した青年部員は「震災の時は子供だったので、警備員が被災者から信頼を寄せられていたことを知らなかった。後輩たちに伝えていきたい」と話した。
講話に先立ち、参加者全員で黙とうを捧げた。
特集ワイド 支援協定の30年2025.03.11
続く災害、見直し進む
都道府県警備業協会と地元の警察や都道府県が締結している「災害時支援協定」の見直しが進みつつある――。本紙が行ったアンケート調査でわかった。協定締結から時間が経過し、現行法令や災害の実情を踏まえた内容に更新する時期に差し掛かっている。各警協が被災した場合にいち早く業務を再開させるための事業継続計画(BCP)策定も徐々に進んでいる。
アンケート調査は都道府県協会事務局に調査票を送り、3月6日までに全47協会から回答を得た。
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災から30年。未曽有のは、国民の防災やボランティア活動への意識、災害対策基本法をはじめとする関係法令が様変わりする契機となった。警備業と災害支援の関わりも95年を境に変わった。
都道府県警協が自治体や警察を相手に締結する災害時支援協定の第1号は95年11月、北海道警協と札幌市が締結した「大規模な災害発生時における支援協定」だ。同警協は98年12月、道と基本協定を、道警本部と細目協定を締結した。
警察本部との締結は96年1月、東京と警視庁の協定が初めて。同協定は98年に再締結している。各地で締結が進み、2001年3月に佐賀が警察本部と締結したことで、47警協が都道府県・警察本部との支援協定が締結された。
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調査では災害支援業務に関する基本協定、細目協定に関する3月1日時点の状況を聞いた。
基本協定の相手方は都道府県警察本部が20、都道府県と警察本部との3者協定が1(岡山)、都道府県は26となった。01年当時は都道府県24、警察本部23だったが、相手方の変更が進んだ。警協の回答では主な変更点に「相手方を警察本部から都道府県に変更」を挙げており、都道府県の比率は今後も上昇する傾向だ。
相手方には都道府県、警察本部以外に、市町村や民間団体も挙がった。長野は県内6市と、栃木と宮崎は地元の建設業協会とそれぞれ協定を結んでいる。
栃木と宮崎は建設業側の申し出から締結に至ったという。建設業は被災地のインフラ復旧に不可欠な産業で、生コンクリートや建設重機などの業界団体や警協とも連携を強め、災害対応を円滑・迅速に進めたいとの狙いがあるという。
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47警協の協定に基づく災害への支援体制が01年に確立して以来、相手方から出動要請があったのか聞いた。「あった」は長野、兵庫、岡山、広島の4警協。「ない」の43警協には石川、熊本などの被災県が含まれる。「ある」の兵庫は豪雨災害などに伴うインフラ復旧工事の交通誘導警備などで繰り返し出動要請を受けている。
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支援業務の「出動者を事前に選任している」のは、24警協。22警協が「選任していない」と回答(無回答1)。事前に選任している24警協のうち、出動者の「名簿」を作成しているのは18警協だった。このうち13警協が2年以内に定期的に名簿を更新している。名簿の記載内容は警協によって異なる。埼玉は「名前の記載は隊長等のみ、隊員は個人を特定していない」としている。香川は、支援隊の隊長と班長等は事前に指定し、隊員は不指定としている。名簿には隊長と班長のみ記載することとしている。滋賀は「会員も被災することがあるので、あらかじめ指定することはない。発生時点で出動可能会社を選定して県警と連絡を取らせる」と回答した。
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出動費用の定めが記載の有無については「記載されている」が37警協だった。
支援協定の見直しの動きが活発化する前段階には、転機となる大規模災害が発生している。12年に宮城が警察との協定・細目を改訂した前年には東日本大震災があった。10年後の22年12月、岡山が県と警察との3者協定を締結している。背景に「平成30年7月豪雨」があった。協定に基づく出動要請での業務中、警備員2人が犠牲になった。協定に基づく警備業務の内容や契約の在り方を見直す契機となり、改訂作業へ広がりを見せている。
一方、全国警備業協会は22年9月、警備員の安全確保することなどを盛り込んだ「自然災害発生時における警備員の安全確保のためのガイドライン」を公表した。現行法令や同ガイドラインを順守すると、協定内容に整合性が取れないことから改訂するという回答もあった。
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各警協に3月1日時点での協定見直しの状況を聞いた。
最多は「改訂を予定している」の11。中には「『全警協ひな形』を参考に改訂を予定している」(富山)、「警察本部との2者協定を県・警察との3者協定に改訂する」(佐賀)など具体的な回答もあった。半数以上が改訂に向け何らかの動きを示している。「その他」の中には新協定を締結する直前まで進んでいるという回答が2件あった。
BCP、5協会が策定
47警協のうちBCP(事業継続計画)など災害からいち早く業務を再開するための計画やマニュアルを策定しているのは5警協だった(無回答2)。策定していない40警協の中には25年度中に策定予定という回答が2件あった。策定していない警協の中には、事務局職員が被災した場合などを想定し、「協会員から“協会事務補助員”を出せるよう作業中」(高知)と具体策を検討する警協もある。
また、会員会社に対しBCPの策定を呼び掛けるなどの取り組みを行っているのは25警協、21警協が取り組んでいないことが分かった(無回答1)。
警備会社が災害時に被災し、事業を再開できない状態が続くと犯罪や事故が増加する恐れがある。全警協は加盟会社の実情に合わせて加筆修正することができる「警備業者としてのBCPの雛形」を作成。
中小企業庁の指針に基づきながら警備業者向けに項目や書式を調整している。同雛形をウェブサイト上で公開し、策定を促している。
子は父と同じ道に
盛岡市に本社を置く「M・K・G」代表取締役の田畑克也氏(43)。2011年3月11日は宮古支社にいた。田畑氏の故郷・宮古にも津波が押し寄せ、自宅を飲み込んだ。妻と4人の子どもは無事だったが、住まいを失った。同じ境遇の従業員たちと支社で共同で生き抜いた。
14年が過ぎ、沿岸部ではインフラや建物の復興は進んだが、人口減少が止まらず、街の活気が失われているという。「流出した人口に比例して従業員も少なくなっていく感じです」と、同社に限らず警備業の人手不足もより深刻だ。
明るい話もある。「4人の子どものうち、県職員になった2番目の子が公務員の職を辞めて当社の事務を手伝って私を支えてくれています。反対したのですが、粘り負けしました。3番目の子も大学に通いながらアルバイトで交通誘導警備員として働いてくれています」と笑顔で話す。14年を経て4人の幼子のうち2人が父と同じに歩みを進めている。同社は交通誘導警備にAIシステムを導入したばかり。警備員の安全と人手不足対策の面で新しい技術が強い味方になると考えている。
田畑氏は災害支援と警備業の在り方について実体験を踏まえてこう話す。「警備員も被災者になります。誰かを守る前に、まずは自社の従業員とその家族の安全が第一です。災害支援は大切な活動ですが、特に初動で被災地の警備会社が参加することは難しいと思います。所属する岩手警協青年部会では豪雨災害に遭った地域を定期的に訪問しボランティアで災害ごみの片付けなどやれる範囲で手伝っています」。支援の手を差し伸べるには、会社をはじめ自分たちが無事であることが前提だ。