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クローズUP

埼玉警協 eラーニング導入2025.03.01

事前講習に4月から

埼玉県警備業協会(炭谷勝会長)は4月から、特別講習の事前講習の学科にeラーニングを導入する。全国で初めてで、講義の動画を配信し「いつでもどこでも何度でも」の学習を可能にする。

事前講習は1回につき2日間(1日目=学科と実技、2日目=実技)。対象の業務検定は雑踏1級と雑踏、交通誘導、施設、貴重品の各2級。2025年度は計12回(24日間)を予定している。

eラーニングの動画は8〜9本で計約3時間。導入に伴い収録した。関係法令や事故発生時の対応など、従来の学科講義と同じコンテンツを配信する。確認用のテストも収めた。受講者は教材が手元に届いてから特別講習の前日まで、パソコンやスマートフォンで動画を視聴できる。

事前講習では受講者をA・Bの2グループに分ける。講習会場での1日目は、グループAは午前がeラーニング、午後が実技、グループBは午前が実技、午後がeラーニングとなる。

講習会場でのeラーニング受講は任意で、実技のみも可能。午前と午後の両方、実技を受けることができる。自宅などでのeラーニングが難しく講習会場で受ける場合は、協会のパソコンを使用できる。

埼玉警協によると、事前講習では高齢や現場経験の浅い警備員の受講が増加。実技を苦手とする人が多くなっている。eラーニング導入により学科の利便性向上を図ることで、検定合格に向けて実技時間を増やしたい受講者のニーズに応える。

埼玉警協は特別講習の予約システムを2023年4月から運用している。

特集ワイド 防ごうハラスメント2025.03.01

「防衛手段の準備は必須」

離職を防ぎ健全な職場づくりを進める上で、各種ハラスメントの防止は企業にとって重要課題だ。東京都警備業協会(澤本尚志会長)施設警備業務部会のワーキンググループ(WG)は「会員企業のハラスメント対策の現状」と題するアンケート結果を発表した。警備会社でのパワハラ、セクハラ相談件数や防止対策がもたらす効果を明らかにし、対策推進を呼び掛けている。

東京警協施設警備業務部会(實川利光部会長=協会常任理事、アルク)のWGは毎年度、警備業が直面する課題について調査研究と発表を行っている。2023年度のテーマは「定着」。24年度のテーマは「ハラスメント」だ。

2月7日に都内で開催された同部会の報告会の中で、アンケート結果をまとめた報告書が発表された。アンケートは昨年8月、施設警備業務部会に登録の639社を対象に行い、130社から回答があった。

社員からハラスメントに関する相談を受けていた企業は41.5%、相談はなかったとする企業は58.5%。過去3年間の相談件数は「1件以上10件未満」49社、「10件以上20件未満」3社、「20件以上」2社。相談の内容は、パワーハラスメント(49社)、セクシュアルハラスメント(25社)が多くを占めた。

予防・解決に向けた取り組みについて「実施している」89社、「一部実施している」27社。13社は「実施していない」と答え、認識に“温度差”がうかがえる。

各社が取り組んでいるハラスメント対策の種類では114社がパワハラ、101社がセクハラを挙げたほか、「妊娠・出産・育児休暇等のハラスメント」(マタニティーハラスメント)72社、「介護休暇等のハラスメント」63社、「顧客からの著しい迷惑行為」(カスタマーハラスメント)61社。報告書では「女性の就業率が低い警備業界においてマタニティーハラスメント対策を行う企業が多いことは注目に値する」と指摘している。

各社の具体的な取り組みでは88社が「相談窓口の設置」を挙げた。「相談したことを理由に不利益な取り扱いをされない旨を定めて周知」が62社。「事業主によるトップメッセージの発信」、「経営幹部が注意を払うための啓発(役員向け研修)」、「職場でハラスメントを防ぐ方針の明確化と周知」などの回答が寄せられた。

対策がもたらす効果では48社が「休職者、離職者が減少した」と回答。ハラスメント防止は、定着促進につながる重要な取り組みであることが明らかになった。

対策を進める上の課題として「ハラスメントかどうかの判断が難しい」「発生状況の把握が困難」「社員の理解不足」「顧客等関係者の理解不足」「社内に対応する適切な人材の不足」などが挙げられた。

また、社員からの相談内容で「顧客からの著しい迷惑行為」を挙げたのは3社にとどまったが、報告書は、東京都のカスハラ防止条例やSNSによる情報の拡散に言及。「企業として防衛手段の準備は必須」としている。

實川部会長は「ハラスメント対策の取り組みは離職を防ぐ職場環境づくりに結び付くものと分かった。一方で、事案が起きた場合の対応や判断はデリケートな問題も含み、専門知識を持つ人材の育成などの課題が浮き彫りになった」と話している。

「対策担当者のサポートは重要」

WGの報告書では、ハラスメント対策に取り組む会員企業(匿名)4社の事例を紹介している(抜粋)。

▽A社(従業員800人) 総務社員が担当する相談窓口を設置、社員からパワハラ事案が2件寄せられた。関係者の言い分を聞いて判断する上で、知識や専門性が必要であり担当者の負担増につながった。

▽B社(同1500人) 役員、管理職の研修、新任・現任教育でハラスメント防止の教育を実施。各職場の慣例的な小さなコンプライアンス違反をあぶり出した。通報窓口は、社内外の3か所に設置。社内の調査担当者は通常業務と合わせヒアリングなどを行うので、通報が重なるとオーバーワークとなる。ハラスメントの「発生理由」を確認し、対策を施すことが必要という。

▽C社(同400人) ハラスメント防止委員会を設置。メンバーは経験がなく、書籍「ハラスメント対応マニュアル」(新日本法規出版)を読み、手探りで進めた。社員からは「社内に相談して秘密が漏れることはないか」「相談できたので安心して仕事に取り組める」などの声がある。

▽D社(同950人) 「職場のハラスメント防止宣言」を全従業員に配布。相談受付の窓口は外部に委託し、対策チーム(ハラスメント委員会)は社内の役員や管理職が務める――など。

報告書では、ハラスメント事案の調査と解決には労力と時間を要することから「担当者の負担を軽減してサポートする体制の構築は重要」と指摘している。警備現場の欠員で十分な休暇が取れない疲労、いら立ちが言葉に現れトラブルに発展する事案が増えている。また、「自社と顧問契約を結ぶ弁護士や社会保険労務士をハラスメント委員に任命して助言を得ることや、外部機関のサービスを活用することも問題解決に有効」としている。