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愛知警協 県と災害時協定2025.03.21

会員が「適正価格」で受託へ

愛知県警備業協会(小塚喜城会長)は3月10日、愛知県(大村秀章知事)と「災害時における地域安全の確保等に係る警備業務の実施に関する協定」を締結した。大規模災害の発生時、県の要請に基づき会員事業者は「適正価格」を基準として警備業務を受託することや、短期間に無償で行う「災害支援協力隊の運用」が盛り込まれた。

今回の協定内容は次のとおり。明記された警備業務は(1)避難所などで犯罪防止の警戒活動を行う施設警備(2)物資輸送拠点、災害廃棄物仮置場などでの交通誘導警備(3)帰宅困難者の誘導を行う雑踏警備(4)その他必要と認める警備。

警備業務の費用は県が負担し、公共工事設計労務単価に法定福利費などの必要経費を加えた「適正価格」を基準として、契約締結時に関係者が協議して決める。受託する会員事業者は書面を交付し契約を結ぶ。

災害発生後、契約に基づく業務実施までの短期間、協会は応急的な支援活動として「災害支援協力隊」をボランティアで運用する。

さらに、協定に基づき出動する警備員の確保に向けて愛知県以外を事業区域とする警備業協会との連携強化を図るなど「広域支援体制の整備」に努めることも盛り込んだ。今回の締結に伴い、協会と県警察の間で1997年に結ばれた災害時協定は廃止された。

名古屋市内の県公館で行われた締結式に大村知事、協会から小塚会長と寺倉利彦専務理事、自民党愛知県議団・石塚吾歩路団長などが出席した。

大村知事は「南海トラフ地震などの発生が危惧される中、愛知県警備業協会との間で協定が締結できたことは心強い。官民が連携する災害対策は県民にとって大きな力となる」とあいさつした。

小塚会長は、同県議団の尽力に謝意を表した上で「警備業界が持てる力を災害時には県民の皆さまに提供できる意義深い締結と考えている。さらに訓練を重ねるなど安心安全に役立てるよう会員一同努力したい」と述べた。

東京警協 災害に備え総決起大会2025.03.21

澤本会長「非常時の使命、再認識」

東京都警備業協会(澤本尚志会長)は3月14日、「災害対策総決起大会」を台東区内で開催した。警視庁との間で結ぶ災害時支援協定の意識付けを目的に2003年から隔年で開催、コロナ禍による中断を経て8年ぶりに行われた。

協会の災害対策旗を先頭に都内8地区の災害対策委員はそれぞれの地区旗を掲げて入場し、続いて澤本会長があいさつした。首都直下地震、南海トラフ地震へ備えを呼び掛け、協会の災害対策の取り組みを次のように強調した。

「今後も規定の整備、対策の充実強化、訓練の推進に努めてまいりたい。都民が警備業に寄せる信頼と期待に応えるため、震災発生時、要請に基づき出動する各社の『登録警備員』に対する指導教育の徹底、士気の高揚を図り、非常時に課せられる使命を再認識することが重要です」。

来賓の警視庁生活安全部・今村輝明理事官は「有事における対応力は普段の努力、訓練により培われるもので本日の大会は意義深い」と述べた。

災害対策委員会・中田文彦委員長(協会副会長=ジャパンパトロール警備保障)は「警視庁との合同訓練を通して知識・技能の向上に努めてきた。災害時には、都内をはじめ関東10県に派遣される部隊の中核として活動しなければならない」と決意表明を行った。

警視庁警備部災害対策課・齊藤昌巳地域防災係長が「身近な防災術について」と題して講演した。ペットボトル容器をズボンに入れ、ネクタイで結ぶ“応急用の救命胴衣”、包帯がない場合にラップを使う応急の止血、レインコートに新聞紙を詰める防寒具の作り方を実演。警視庁災害対策課の公式「X」アカウントの情報活用を呼び掛けた。

特集ワイド 「労務単価」上昇続く2025.03.21

公共工事や官庁施設保全業務に従事する労働者の賃金(労務単価)は、人手不足や働き方改革を背景に上昇が続いている。交通誘導警備員(A、B)、施設警備員(A、B、C)の賃金も着実に伸びており、2月に公表された新単価では初めて2万円を超えた地域があった。しかし、人材獲得競争でライバルとなり得る他職種と比較した場合、依然低い状況にあり課題となっている。

交通誘導 「職種比較」課題残す

「公共工事設計労務単価」(日額=8時間労働)は、公共工事費の見積もりで使う基準賃金。国土交通省などが51職種の賃金を都道府県別に調査し、毎年見直している。職種のうち交通誘導警備員は、1級・2級検定合格の「警備員A」とA以外の「警備員B」がある。

同労務単価は主に基本給や役職・通勤などの各種手当、労働者負担分の法定福利費で構成される。時間外・休日・深夜労働の割増賃金のほか、事業者負担分の法定福利費や警備員の募集、装備品、教育などにかかる「必要経費」は含まれていない。元請け建設会社が警備会社への下請代金に必要経費を計上しない、または値引きを行うことは不当行為に当たる。

同労務単価の全国・全職種平均は建設投資の減少に伴い、1999(平成11)年度の1万8584円から、2000年度に1万6263円へと大きく下がった。その後も下降ペースが続き、1万3000円台にまで落ち込んだ。

上昇に転じたのは2013年度。公共工事従事者の社会保険加入徹底の観点から、労務単価の算出方法を見直したことにより、1万5000円台に回復した。その後は建設投資の増加も相まって上昇の一途をたどり、20年度に2万円を超えた。

この3月から適用されている新単価は全国・全職種平均で2万4852円。前年度比の伸び率は6.0%と近年で最大となった。

交通誘導警備員は、警備員Aが1万7931円、警備員Bが1万5752円で、前年度からの伸び率はそれぞれ5.7%となった。

全国警備業協会(村井豪会長)は「12年度からAは9409円、Bは7745円の上昇となっている」とし、今回の労務単価上昇の背景について「工事を請け負う企業が賃金の引き上げで人手を確保する動きや年次有給休暇の取得義務化、時間外労働を短縮するための費用が反映されている」とみる。

交通誘導警備員の労務単価は上昇を続け、2万円を超えた都県(東京、静岡、愛知)もある。だが、横軸で見た場合には課題を残す。交通誘導警備員は、公共工事の従事者が多い「主要12職種」に含まれているが、新単価の“順位”で12職種中、警備員Aは11番目、警備員Bは12番目。他職種も引き上げが続き、伸び率に目立った差がないため、依然として低い水準にある。

Aは国家資格を有しているものの、「普通作業員」(作業内容=資材の積み込み・運搬や標識・境界杭の設置等)を約5000円、「軽作業員」(作業内容=工事現場の清掃・散水や仮設物の設置・撤去等)を200円ほど下回っている。

そうした中、国は現場人材の資格やスキルを正当に評価して処遇改善に結び付けるための調査研究事業を新たに行う。有識者会議を設置し、ヒアリングやアンケートから始める。

一方、人材確保に必要な収入安定化への一例として、降雪地域の警備会社からは、自治体が除雪業者の人件費を補てんする「基本待機料制度」について、道路除排雪に伴う交通誘導警備員にも適用することを望む声がある。制度では、除雪車の稼働時間が、設定された基本時間に満たない場合、その差に応じた人件費が支払われている。

施設警備 「清掃員」上回る

「建築保全業務労務単価」(日額=8時間労働)は、官庁施設保全業務の労務費を積算する際の“参考”単価。国土交通省官庁営繕部が、業務従事者に支払われた賃金を調査し、施設警備など3職種別、10地区別で毎年改定している。全警協は「国の建築物に関する契約に限られているが、そのほかの警備業務の料金に影響を及ぼさないとも言い切れない」としている。

同労務単価は主に、基本給や各種手当、労働者負担分の法定福利費からなる。時間外や夜勤の割増賃金のほか、装備品や事業者負担分の法定福利費、研修にかかる費用などは含まれていないため、発注者は警備会社に別途支払う必要がある。

同労務単価の全国・全職種平均は、「公共工事設計労務単価」と似た推移を描いてきた。2012(平成24)年度に1万1552円にまで落ち込んだが、その後上昇を続け、25年度は1万8002円。伸び率は前年度比8.3%と近年で最大となった。

4月から適用される施設警備員の新単価は全国平均で1万5623円。2万3032円の「保全技師等」とは開きがあるが、1万5350円の「清掃員」を若干上回った。

施設警備員の“区分別”の全国平均は、1級検定合格のAが1万7980円、2級検定合格のBが1万5340円、それ以外のCが1万3550円で、最高の「東京地区A」は2万円を超えた。

全警連 「物価スライド」要望

全国警備業連盟(青山幸恭理事長=ALSOK)は労務単価の改定をめぐり、自民党警備業推進議員連盟(萩生田光一会長)所属の国会議員に要望書を提出している。

この3月から適用されている公共工事設計労務単価は昨年10月時点、4月から適用の建築保全業務労務単価は昨年6月時点の「労務費調査」がそれぞれ反映されている。

要望書では「単に調査時点の実態に基づく引き上げでは、その後の物価上昇の影響を盛り込めない」として、物価スライドによる是正を求めた。

また、災害復旧工事や、経済安全保障推進法で指定する基幹インフラ施設などを例に、リスクや重要度に応じた労務単価の割増について要望している。