クローズUP
安全安心守り、1か月余2025.05.21
大阪・関西万博
「大阪・関西万博」開幕から1か月余り、夢洲(大阪市此花区)の会場には一日最大で2000人の警備員が配置され、安全安心を守り続けている。
長蛇の列ができる「アメリカパビリオン」では、建物壁面の巨大なLEDスクリーンに米国の名所の数々が映し出される。パビリオン正面に警備員が立哨し、不測の事態に備えていた。
2025総会スタート2025.05.21
都道府県警備業協会の定時総会がスタートした。適切な価格転嫁の推進、人材確保など喫緊の課題に対する協会の取り組みが注目される。
新潟警協 「労務費」適切転嫁
野澤慎吾会長(セコム上信越)は「警備業は生活安全産業として社会に認知され、高い評価をいただけるようになった」と述べた。一方で、現場で働く警備員の賃金や労働条件について「社会的評価は決して高いとは言えない」と指摘。労務費の上昇を適切に警備料金に転嫁していくためとして、「発注と受注の両者に積極的な取り組みが求められている」と強調した。
今年度事業では、県警察への防犯機能付き電話機の寄贈や、働く警備員のフォトコンテストなどを引き続き行う。青年部会は県警察などと連携し、サッカーJ1・アルビレックス新潟のホームゲームで広報活動に取り組む。
新役員は次の通り(敬称略)。
【理事】山田誉大(司法書士法人とやの合同事務所)、玉木尚子(玉木尚子社労士事務所)
宮城警協 県が低入調査導入
「関係団体・機関への要望書提出などの結果、宮城県発注の警備業務に“履行能力確認調査”が導入されました」――。氏家仁会長(トスネット)は、協会活動の成果を披露するとともに、人手不足解消のための賃上げ原資となる価格転嫁、取引適正化への取り組みを求めた。
総会前には、県出納局契約課担当者を講師に低入札価格調査制度をテーマとした「経営者研修会」が開かれた。
宮城県は4月1日から、県発注の警備業務への低入札価格調査制度の適用を開始。予定価格200万円を超える警備業務(人的、機械とも)において、予定価格の70%(基準価格)を下回る価格での入札者に対し、適正な業務履行の可否を問う「履行能力確認調査」を実施する。調査結果は低入札調査委員会が審議、落札の適否を判断する。委員会は業務遂行に関する事項に加え▽警備員の資格▽警備員の賃金が最低賃金を下回っていないか▽会社の警備業法違反の状況――なども判断指針とする。
「まちづくり」要綱改正2025.05.21
警察庁 防犯カメラ推進
警察庁は「安全・安心まちづくり推進要綱」(2020年3月策定)を改正、4月16日に都道府県警察に通知した。
主な改正点は4点。▽ハード・ソフト両面の対策を効果的に組み合わせた安全・安心まちづくり推進のための必要事項として、研究機関などの学術的知見の参考▽必要な資機材の整備に当たり、地域の犯罪情勢の分析、防犯設備業界による防犯診断などを行う▽資機材整備での補助金活用など、自治体関係部局との連携強化――を追加した。防犯カメラについては、設置が必要な場所を例示するとともに、設置場所を洗い出す際の着眼点も示した。
特に防犯カメラについては、昨年12月の政府「犯罪対策閣僚会議」決定の「“闇バイト”強盗事件から国民の生命・財産を守る緊急対策」でも言及。「カメラ増設が必要な場所を整理し、地域社会の多様な関係者に保存期間の十分なカメラ増設を働き掛ける」と明示されたことなどを受け、警察庁は今回の要綱改正に合わせて「防犯カメラの設置の推進について」を4月16日に都道県警察や管区警察局などに通達した。
同通達ではカメラ設置について、警察署ごとに防犯カメラ設置が必要な具体的な場所を洗い出すことや、その際に捜査部門を含む本部関係部署と各警察署との緊密な連携を求めた。
また、洗い出した場所に十分な防犯カメラが設置されるよう自治体などとの連携強化に加え、地方創生臨時交付金の「重点支援地方交付金」や「新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型、第2世代交付金)」など地方創生交付金を活用したカメラ設置を強く働き掛けるよう求めた。
防犯カメラの調達・運用については、一定以上の画質水準などの機能や十分な保存期間が確保されることや、各種セキュリティー評価制度を活用するなど情報セキュリティーの観点にも十分配意することも明記した。
特集ワイド 受けよう「特別講習」2025.05.21
警備員特別講習事業センター(以下=事業センター)による「特別講習」は節目の20年目を迎えている。講習での修了考査に合格し、国家資格である警備業務検定を取得した人は、2006年1月の開始時から25年3月までで約26万人。質の高い警備業務を支える大きな力となっている。特別講習の実績、展望とともに、埼玉県警備業協会の先駆的な取り組みについて取材した。
合格率アップ
警備業務検定を取得することは警備員にとってキャリアアップにつながる。特定の警備業務を行う場合に検定合格警備員の配置を義務付ける「配置基準」に伴い、高度な現場で働くことができ、給料アップにも結び付く。警備会社にとっても、有資格者を必要とする大型案件などを受注できるメリットがある。
事業センターの特別講習で対象となっている警備業務は5種類(施設、雑踏、交通誘導、核燃料物質等危険物運搬、貴重品運搬)。それぞれ1級と2級がある。事業センターが47都道府県警備業協会に委託して運営されている。
特別講習は2006年1月〜25年3月に7045回行われ、受講者数39万7564人、合格者数25万9902人。合格率は65.4%となっている。種別でみると、実施回数、受講者数、合格者数とも交通誘導警備業務2級、施設警備業務2級、雑踏警備業務2級の順に多い。
直近の24年度は335回行われ、受講者数1万5609人、合格者数1万1060人。合格率は71.0%となった。種別の合格率を累計平均と比較すると、受講者数の多い交通誘導警備業務2級では5ポイント(24年度65.2%、累計平均60.3%)ほど、施設警備業務2級(24年度76.3%、累計平均66.4%)と雑踏警備業務2級(24年度82.3%、累計平均71.6%)では10ポイントほど高くなった。
合格率アップの一方で、特別講習の受講者数は減少傾向にある。事業センターの邨田昌英・業務統括課長は要因について「30、40代のコア世代が減少している」と説明する。警備会社が既に、有資格者を十分に確保している側面もあるという。
「VTR試験」変更
特別講習の実技試験では4月に、施設警備業務2級の「巡回実施要領」と貴重品運搬警備業務2級の「駐車場所・運行中の周囲の警戒要領」で見直しが行われた。いずれも録画映像を視聴して解答する「VTR試験」で、従来の記述式から、チェックを付ける方式へ変更された。事業センターによると、通常の警備業務に近い「瞬時の判断を求める」ようにしたという。
チェック式は受講者にとって負担軽減につながることから、今回の変更は受講者増加に向けた取り組みの一環でもある。今後も実技試験では、場面想定や使用資機材の変更など、警備現場に即し、時代に合った内容にすることを検討していくとしている。
進むデジタル化
事業センターは特別講習のデジタル化も進めている。その一つが、オンラインで申し込みの受け付けができる環境の整備。準備が整った都道府県警備業協会から順次、対面からオンラインに切り替えてもらうことにしており、来年4月の全面運用を目指す。
デジタル化では、学科におけるeラーニング導入も課題となっている。eラーニングのコンテンツは、苦手とする受講者が多い憲法や刑法などの関係法令を中心とし、全国共通にする方針。受講者に自宅などで予習してもらい、特別講習の対面講義で疑問点を解消してもらうことなどを思い描く。
邨田課長は「eラーニングの開始時期や運用方法の検討を進めている」と話す。
埼玉警協 事前講習にeラーニング
4月19日、埼玉県警備業協会(川越市、炭谷勝会長)の研修室。交通誘導警備業務2級の「事前講習」の受講者が集まり、スクリーンに映し出された動画を視聴していた。4月から学科講義に導入されたeラーニングの取り組みの一つだ。
特別講習での検定合格に向けた事前講習は47都道府県警備業協会で行われているが、eラーニング導入は埼玉が初めて。特別講習講師で組織する研究部会が主導した。
理由として、アンケートに答えた受講者から、苦手とする実技訓練の時間を増やしてほしいとの要望が多く寄せられたことがある。苦手の背景には、高齢や現場経験の浅い受講者が増えていることがあるという。研究部会では、学科にeラーニングを取り入れることで、実技の時間を増やし、指導の細分化を図れると考えた。
埼玉警協による今年度の事前講習は、雑踏警備業務1級、雑踏と施設、交通誘導、貴重品運搬の各警備業務2級を対象に計12回・24日間(1日目=学科・実技、2日目=実技)を予定している。eラーニングの動画は、従来の対面式講義をベースに自主制作した。
コンテンツは関係法令や事故発生時の応急措置で、テキストをナレーションで読み上げる形。動画の本数や時間は種別で多少違いがあり、「8〜9本」「約2時間〜2時間半」となっている。集中力持続の観点から、動画は1本につき20分以内を目安に制作した。
配信は事前講習の約1か月前から特別講習の直前まで行うことにしている。
試験対策で利点
埼玉警協の事前講習は受講者をA・Bの2グループに分ける。グループAの1日目は午前が学科、午後が実技。グループBは午前が実技、午後が学科だ。
4月26、27日の特別講習に向けて、同19日に事前講習1日目が行われた交通誘導警備業務2級(受講申し込み55人)の学科では、eラーニングの動画を会場内で上映。動画とは別に講師は、テキストに赤字で書かれているところが重要であることを対面で説明した。赤字の部分は過去の試験問題を踏まえたものだという。また講師は、スマートフォンでの動画の見方などを希望に応じ、個別にレクチャーした。
自宅などで動画を視聴できるeラーニング導入に伴い、事前講習会場での学科受講は任意となり、1日目の午前、午後とも実技訓練を受けることが可能に。同日の事前講習では7人が一日を通じて実技を受講し、動作や立ち位置、合図などを段階的に習得した。
eラーニングの学習状況については、埼玉警協がパソコン画面で把握することができる。初めてのeラーニングでは、端末での動画視聴回数が100回を超えた受講者がいた一方、一度も見なかった受講者もいて、バラツキが見られた。視聴ゼロの理由は定かでないが、内田達也・教育専門官兼総務課長は「(受講者が)デジタルに苦手意識を持っているとすれば、何とかしなければいけない」と話した。
eラーニングではテキストに確認用テストが付随されており、協会は結果を把握できる。誤答の多かった問題を特別講習の学科講義で取り上げるなど、試験対策上の利点がある。