クローズUP
警備員の熱中症予防2025.07.21
新宿労基署が事例集
新宿労働基準監督署(東京都新宿区、坂本直己署長)はこのほど、「建設現場の熱中症予防対策事例集」(A5版、全16頁、カラー)を作成した。同署管内(新宿区、中野区、杉並区)の建設現場で実際に行われている熱中症予防の取り組みを写真で紹介している。
事例は暑さ指数(WBGT値)の把握方法や同低減策、熱中症発症者や疑いのある人を早期発見する方法、水分・塩分を摂取するための対策――など熱中症予防のための労働安全衛生規則や通達などに則した取り組みに加え、次の「警備員に対する対策」も紹介。
▽列車見張りの監視台に屋根を設置▽警備員用の専用ボックス設置▽ガードマンボックスにエアコン▽警備員クールダウン室の設置――など設備的対策に加え、▽極力日陰で立哨▽空調服着用▽熱中症対策ウオッチ着用▽トランシーバー配布し随時体調確認――など装備や作業状況も全て写真で紹介。警備業や建設業が広く水平展開できる内容だ。
事例集は近く、東京労働局のホームページでも紹介する。
「地域見守り」協定結ぶ2025.07.21
美祢市と美祢警備保障
美祢警備保障(山口県美祢市、本間智子代表取締役社長)は6月27日、美祢市(篠田洋司市長)と「美祢市地域見守り活動に関する協定」を締結した。
協定により市と同社は連携し、高齢者や障害者など支援が必要な人の異変を早期に発見した際、対応を行う。日常の業務を通じ「郵便物がたまっている」「電灯はついているが呼び掛けに反応がない」「洗濯物が干したまま」などの異変に気づいた時は市へ連絡し、緊急性があれば警察、消防に通報する。地域の高齢者が安心して生活できるよう支える取り組みだ。締結式の様子は地元テレビで放送された。
これまでに同社は、幼稚園での交通安全教室開催や、「警備の日」PRとして警備員が通学路のカーブミラーを清掃するなどの活動を重ねてきた。
本間社長は「微力ですが“種をまかないと花は咲かない”という言葉の通りに、できることから取り組み、意識をより高く持って地域社会に貢献していきたいと思います」と述べた。
「最賃」議論スタート2025.07.21
労使の隔たり大きく
厚生労働省は7月11日、中央最低賃金審議会に2025年度の「地域別最低賃金額改定の目安」を諮問した。これにより、今年度の最賃改定をめぐる議論がスタートした。政府目標は「20年代に全国平均1500円」。実現には29年度までの5回の改定で毎回7%程度の引き上げが必要で今年度の議論の行方が注目される。
審議会(小委員会)は今後計4回ほど開催を予定する。早ければ月内、遅くとも8月上旬には改定額(時給引き上げ額)の目安を決定。地方最賃審議会での議論を経て、今秋から新たな最賃額が発効する。
11日の審議会では、福岡資麿厚労相に代わり出席した鰐淵洋子厚生労働副大臣が、諮問文を審議会の藤村博之会長に手渡した。
鰐淵副大臣は政府閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」への配意と、労働者の生計費や企業の賃金支払能力などのデータや地域間格差にも配慮した真摯な議論を求めた。
「骨太の方針」「新しい資本主義グランドデザイン」は、ともに「2020年代に全国平均1500円という高い目標達成へ向け、最大限の取り組みを5年間で集中的に実施する」を明記している。
一方、労使の見解の隔たりは大きく、使用者側委員の一人は審議会開催について「(予定の4回に対し)5回、6回の場合もある。納得のいく審議を」と発言。近年、政府主導で大幅な引き上げが続いている最賃審議に警戒感を示した。
5か年計画で支援
24年度の最賃改定額は全国一律50円増。過去最大の上げ幅5%増だった。これを受けた地方審議会では、国の改定額を27県で上回り、全国加重平均の最賃額は1055円となった。
25年度も大幅な引き上げが予想され、中小企業からは危惧する声が上がっている。これに対し政府は、「骨太の方針」「新しい資本主義グランドデザイン」の中で最賃引き上げに対応する中小企業などへの支援も明記。具体的には「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に基づき、特に地方の中小・小規模事業者に重要な官公需での価格転嫁や取引適正化の徹底、「省力化投資促進プラン」などで中小・小規模事業者の生産性向上を図る。
地方最賃審議会で中央審議会の目安を超える最賃の引き上げが行われた場合は、売上拡大や生産性向上を図るための特別な対応として、政府補助金による重点的な支援や交付金などを活用した都道府県の取り組みを後押し。生産性向上で最賃の引き上げに対応する中小・小規模事業者を支援する。
特集ワイド 「低価格落札 排除を」2025.07.21
官公需の価格適正化に欠かせないとして、政府は全国の自治体に最低制限価格制度や低入札価格調査制度の導入を働きかけている。警備をはじめとする業務委託について両制度を導入している自治体のうち、大阪市の担当者に取り組み状況を聞いた。
低入札価格調査制度や最低制限価格制度には、異常に安い価格での落札(ダンピング)が現場の安全性・品質を損なうことを防ぐ目的がある。制度導入が進んでいる政令指定都市のうち横浜、名古屋、大阪などでは、両制度の対象案件については警備業務委託の入札結果とともに予定価格や最低制限価格を公表している。
大阪市が公表している今年1月から6月までに実施した警備業務の入札29件のうち、予定価格に対する落札額の割合「落札率」の最高は96.0%の「東淀川区における夜間の青色防犯パトロール」だった。29件の落札率は90%台2件、80%台7件、75%以上80%未満12件、70%以上75%未満2件、60%台3件、50%台1件、40%台0件、30、20%台各1件で下位10件はすべて機械警備だった。
大阪市の契約制度の担当者は「二つの制度を導入したことで最低制限価格未満の業者を排除できている」と分析する。
また、政府が求める物価スライドへの対応については「実施時期は未定だが、大阪近隣の政令都市の動向なども見ながら導入に向け前向きに検討している」と強調する。
このほか名古屋市や横浜市などでも二つの制度を導入したことにより、低価格入札業者による落札が回避されるようになっている。
官公需の警備業務委託において適正価格での契約が定着すれば、民間との価格交渉の場で価格転嫁の合理的な根拠を示すことに期待が持てる。
一方、制度を導入している自治体でも予定価格の7割が落札額の「相場」として定着している地域が散見されている。
政令指定都市で施設警備を手掛けるある経営者は「市や都道府県の入札が制度導入で改善したのは、地元の業界団体の要望の成果。ただ、予定価格の7割で落札してもあまり利益は見込めない。さらに低価格で落札した業者は警備品質を保てるのか」と疑問を投げ掛ける。
物価が上昇し続ける情勢において警備業界は、官公需業務のダンピング受注の排除に取り組むだけではなく、警備品質の維持には価格転嫁が必要であると、発注者や国民から理解を得る活動も欠かせない。
官公需の価格転嫁、政府が推進
政府は6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(以下、実行計画)の改訂版を発表した。警備料金の適正化の問題に直結する「官公需も含めた価格転嫁・取引適正化」について、地方ほど地域経済に占める官公需の割合が高いとして、都道府県、市区町村に対し官公需に関する価格転嫁の徹底を訴えている。
実行計画では、国・地方を問わず発注者に向けて「低入札価格調査制度」の厳格な運用を訴えるとともに「最低制限価格制度」の導入も求めている。警備業務をはじめとする委託契約への導入拡大も推進している。前年度の低入札価格を次年度の予定価格算出の根拠にすることを禁じ、契約後でも物価上昇に伴い契約額を引き上げる「スライド対応」や年度途中の契約額の改定などの対応も要請している。
都道府県や政令指定都市における二つの制度の導入は進んでいるが、市区町村の約7割が工事関係以外の入札では未導入で「必要性を認識していない」と回答する自治体が多いことを政府は問題視している。
実行計画ではほかに、工事と交通誘導警備の分離発注を徹底することや危険を伴う警備業務の割増加算のルール化、有資格者に見合った公共工事設計労務単価の設定などが明記されている。