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テーマは「講師」確保策2025.12.11

中部地区連 会長等会議

中部地区警備業協会連合会(金子慶太郎会長=愛知警協会長)は11月25日、三重県伊勢市内で「秋季会長等会議」を開催した。テーマは「特別講習・警備員指導教育責任者講習の講師確保策」。各県から現状と課題、対策が報告された。

中部地区連には6県の会長と専務理事、来賓として全国警備業協会の黒木慶英専務理事、小澤祥一朗総務部次長が出席した。

病気のため急遽欠席した金子会長に代わり、地区連副会長の幾田弘文氏(岐阜協会会長)が議長を務めた。

幾田会長は金子会長から託されたあいさつ文を代読。「検定合格警備員や指導教育責任者は国家資格保有者。保有者の誇りや意識の高さを示すばかりでなく、多くの資格者を擁することは警備業界のプレゼンスを高め、適切な価格転嫁実現の大きな一助となる。その意味で講師の役割は大きく優秀な講師確保は大きな課題だ」と述べた。

各県からは次の現状や課題が報告瀬された。

▽特別講習の講師の派遣会社、講師の種別、年齢に偏りがある。このままでは高齢化で講師がいなくなる(富山)。

▽今後に不安が残る。女性講師の確保が課題だ。組織を挙げて講師の重要性をPRしたい(石川)。

▽講師が特定の企業に集中。女性受講者の増加に伴い、女性講師の拡充が課題だ。講師候補者の確保策として「講師教育研究会」を運営、年1回会合を開いて話し合いを行っている。協会役員や経営者が参加する「新春情報交歓会」には全講師が出席、講師の自尊心向上に努めている(福井)。

▽協会への加盟率は高いが講師が少ないのが課題だ。会社の特別講習への関心が低く、講師を希望する警備員に対して会社が拒否した事例もある。短期的な確保策として、講習受講者の中から適任者を抽出、会社に協力を求める。中・長期的な策として、加盟社から講習の“補助員”を出してもらい、補助員から講師候補者に育てる(岐阜)。

▽講師数は77人だが“レギュラー”は限定される。講師は会社でも重責を担っており、所属会社の理解と協力は不可欠だ(愛知)。

▽講師候補は会社の中堅が多く業務多忙で講師として派遣できないのが現状。講師候補者の研修場所が神奈川県の「ふじの」のみのため、時間的・距離的問題から敬遠されがちだ(三重)。

「タブレット」導入でペーパーレス

11月25日に開かれた中部地区警備業協会連合会で、岐阜県警備業協会の幾田弘文会長は自協会の「DXへの取り組み」を紹介した。

具体的には、協会理事会の“ペーパーレス化”を図るために、指や専用ペンで操作する携帯情報端末の「タブレット」を導入する。12月開催の同協会理事会で承認を得る予定だ。

タブレットは12インチ(対角線約30センチ/高さ27センチ/横幅約15センチ)サイズ。当面は20台を5年間リースする。費用は計月額2万円。

幾田会長は「将来的には全警協が実施予定の特別講習のeラーニングでもタブレットを使いたい」と述べ、協会内で行うeラーニングなどの集合教育でも活用していく考えを示した。「(各社や業界で)DXを進めていくには、理事など役員が理解を深めていくことが大事」とも述べ、タブレット導入がDX推進のけん引役になることに期待している。

「家畜伝染病」に備え2025.12.11

東京警協 都と協定を締結

東京都警備業協会(澤本尚志会長)は、東京都(小池百合子知事)と「特定家畜伝染病発生時の支援業務に関する協定」を10月14日に締結した。都庁内で11月25日に締結式が行われた。

協定は牛疫、口蹄疫、豚熱、鳥インフルエンザなどの発生時、会員会社が協力して都が行う防疫業務を支援することが目的。

都の要請時に協会は、事前に選定した「代表協力会員会社」と調整を行い、要請に応じる「協力会員会社」を選定する。業務の内容は▽都が指定する消毒ポイントにおける車両等の誘導、消毒▽発生農場周辺の通行制限ポイントにおける通行者・車両等の誘導――など。

費用については「協力会員会社が当該地域において同種の作業に通常必要とされる費用の額を基準とし、都と代表協力会員会社が協議して決定する」ことが盛り込まれた。

締結式には協会から災害対策委員会・中田文彦委員長(協会副会長、ジャパンパトロール警備保障)、阿部秀樹副委員長(協会常任理事、JTS)、衣川淳一専務理事、東京都から産業労働局・田中慎一局長、榎園弘農林水産部長らが出席。

中田委員長は「都内地域の安全安心に向けて、都の指導を仰ぎながら取り組みます」と述べた。

特集ワイド IP無線アプリで警備2025.12.11

「音声・文字・映像・地図」で即連携

2500万人超の来場者を迎え、無事閉幕した「大阪・関西万博」。サイエンスアーツ(東京都渋谷区、平岡竜太朗代表取締役社長)のIP無線アプリ「Buddycom(バディコム)」は大会警備に活用され業務を支援した。警備員と警備本部、警備員同士の迅速な連携を実現する基本性能と、万博警備を機に追加された新機能、平岡新社長が語る今後の取り組みを紹介する。

「Buddycom」はスマートフォンを使ってグループ通話ができる次世代トランシーバーアプリケーションだ。

2015年に開発がスタートし、現在1500社以上に導入されている。警備業ではセントラル警備保障(東京都新宿区、市川東太郎社長)、にしけい(福岡市博多区、遠藤泰昭社長)、東洋テック(大阪市浪速区、池田博之社長)、大阪ガスセキュリティサービス(大阪市淀川区、杉本和史社長)などの警備会社が活用している。

Buddycomはアプリケーションであることから、無線機などと比較して機能の開発速度や連携などの柔軟性が高く、幅広い機能が搭載されている。具体的には次の機能だ。

【音声通話】

▽中央のボタンを押しながら話すだけで一斉発信できる。

▽ユーザー数やグループ数に制限がない。

▽電話のように双方向で会話が可能。

▽複数グループの会話を同時に受信可能。

▽音質が高い(隣りにいる感覚で話せる)。

【テキスト化・翻訳(国際特許取得)】

▽話した内容は、同時に録音、文字起こしできる(聞き逃しても後から確認可能)。

▽文字で送った内容を音声で読み上げることができる。

▽同時に複数の言語に翻訳できる(85言語に対応し、多国籍な現場でも円滑な連携が可能)。

【映像配信(国際特許取得)】

▽映像を共有しながら話せる(音声や画像だけで伝えにくい情報を正確に伝える)。

▽映像配信は遅延することがない。

【MAP通話】

▽ユーザーの位置情報を確認できる(緊急時に現場に近い人と話したい場合など)。

▽MAPで指定した範囲内のユーザーと会話できる(同じエリア内で情報共有したいときなど)。

さらに新機能を開発、追加されている。

Buddycomは災害現場でも活用されている。2011年3月に発生した東日本大震災では、被災地で同時に多数の通信が発生したため発信規制がかかり、そのために初動対応の遅れが起こって課題となった。Buddycomは電話回線と比べて通信規制を受けにくいデータ通信を使って通話できる。

Buddycomは23年10月、総務省の災害対策用実証アプリケーションに採択された。24年1月に発生した能登半島地震ではBuddycomを自治体・消防・自衛隊などの現場活動組織へ無償提供し、被災地の復旧作業を支援した。

消防庁は24年6月からBuddycomの災害時における現場活動の検討・実証を行った。

25年9月に行われた内閣府主催のDMAT(災害派遣医療チーム)訓練では、災害医療現場での情報共有手段としてBuddycomの実証実験を行った。

サイエンスアーツにはBuddycomの将来に向けて2つのビジョンがある。

一つは新市場の開拓だ。JVCケンウッドとのIP無線共同開発により、建設現場やカメラ付きデバイスの持ち込みが禁止されている現場での利用が可能となる。堅牢性が高い無線機を使用しながら、遠隔地の支援や確認・検査ができる。

もう一つのビジョンは、AIによる働き手と企業の連携だ。現場経験が不足していたり日本語が話せない外国人労働者に対し、AIが作業手順や注意点、自動翻訳を行い現場サポートを行う。加速する人手不足の中、現場教育や監督を補完するなど、働き手と企業の両面から支援する取り組みをめざす。

平岡竜太朗・新社長

サイエンスアーツは11月27日付けで、平岡竜太朗氏が代表取締役社長に就任したことを発表。平岡秀一前社長は代表取締役会長に就任した。Buddycom事業の今後の方向性や展望について平岡隆太朗新社長に話を聞いた。

当社がこれまで積み重ねてきたものを踏まえた上で、さらなる信頼を得ることができるように技術やサービスを提供していきたいと思います。それに加えて、労働人口の減少など社会課題を解決できるようなソリューションとして、Buddycomを提供していくつもりです。

今年最大の国内イベントであった大阪・関西万博には、警備と防災活動に際して「Buddycom」を提供し、サプライヤー協賛を行いました。約6か月という長期間にわたり会場警備にあたった警備員の皆さまにBuddycomを活用いただきました。

開幕前には警備関係者の皆さまに集まっていただき、Buddycomの説明会を開きました。すでに日常の業務で使用されている方も多く、Buddycomの周辺機器も持ち込んで警備業務に臨む会社もありました。初めて使った方々からは「年齢に関係なく使いやすい」「落とし物があったときに写真で共有できて便利」「もっと機能があると思うので知りたい」などの有り難い感想をいただきました。

私は当社に入社してすぐ、エンジニアの一員としてBuddycomの開発に携わりました。22年からは企画本部長として新製品や新サービスの企画・販売、他社との業務提携を推進しました。カスハラ対策機能「セーフティーサポート」や「オンプレミス・アプライアンスサーバー」の提供、周辺機器の共同開発、JVCケンウッドとの業務提携などを実現しました。

社長に就任した今も、私の信条である「お客さまの困り事を解決したい」は変わりなく、変化が速いIT業界で新たな視点とスピード感を持って対応していきたいと思います。

Buddycomは現在、1500社以上の皆さまににお使いいただいています。今後は警備業の発展を一層、ご支援していきたいと思います。

進化続けるBuddycom

サイエンスアーツは、2025日本国際博覧会協会(十倉雅和会長)からの要望を受けて、Buddycomの新機能「地図に画像を重ねて表示」を開発し、大阪・関西万博会場警備に試験提供した。

同機能はBuddycomのMAP通話機能を使用する際、グーグルやアップルの標準地図に加え、任意の画像ファイル(PNG・JPEGなど)を重ね合わせて表示できる。同機能で次の運用が可能になる。

▽社外非公開の施設配置図や警備配置図を地図上に反映する。

▽イベント会場などの屋外マップを表示し人員配置や連携を容易にする。

▽危険エリアや立入制限区域などを視覚的に共有できる。

大阪・関西万博の警備は、万博会場特有の広大で複雑な施設配置や来場者への対応が求められた。質の高い警備業務を行う上で詳細な会場情報を地図上に表示する必要性から、サイエンスアーツは開発に着手した。同社は8月、万博運営への貢献を評価され、万博協会会長から感謝状を授与されている。

同社は今後、警備業をはじめとした各現場業務での活用に向け、同機能を展開していく予定だ。

警備業を含め社会問題化しているカスタマーハラスメント。サイエンスアーツはBuddycomのカスハラ対策機能「セーフティーサポート」を開発し、警備会社のほか小売・航空会社などで実証実験を予定している。機能の特長は次の通り。

▽ワンクリックで即座に緊急通知

カスハラを受けて従業員が助けを求めたいとき、ボタンをワンクリックすることで、あらかじめ設定されたグループへ緊急通知する。録音した会話の音声や、それをリアルタイムに文字起こししたテキスト、位置情報などが共有される。

▽AIによるカスハラ検知、自動緊急通知

接客の音声を常にAIで自動分析し、カスハラに該当する事象を検知した際に緊急通知を自動で行う。

ワンクリック通知、自動通知とも緊急通知を受けた近くにいる従業員が、相手とのやり取りをリアルタイムに確認しながらMAP機能で位置を確認し、現場に駆け付けて事態の重大化を防ぐ。

サイエンスアーツはセーフティーサポート機能を今後、警備業など接客業務が多い業界に向けて順次、導入を進めていく。

JVCケンウッドと開発中

サイエンスアーツはJVCケンウッド(横浜市、江口祥一郎社長CEO)と、Buddycomを搭載したIP無線機を共同開発中だ。

IP無線機はBuddycomを搭載することでLTE回線(携帯電話の通信規格)を活用した広域通話に対応し、グループ間の同時通話や通話録音、文字起こし、同時通訳などを実現する。交通誘導警備や雑踏警備など屋外の業務では堅牢なIP無線機を使うなど、現場の環境に応じた使い分けやIP無線機とスマホの連携などが可能となる。

JVCケンウッドは10月14日〜17日に幕張メッセ(千葉市)で開催された日本最大級のテクノロジー総合展「CEATEC(シーテック)2025」にブース出展し、同無線機のプロトタイプ(試作品)を初展示し関心を集めた。

同ブースではJVCケンウッドの「カメラ付きAIイヤホン」のプロトタイプとBuddycomの連携によるデモンストレーションも行った。

サイエンスアーツとJVCケンウッドは24年10月、資本業務提携契約を締結した。今後は両社の強みを生かして国内外の市場拡大をめざす。